家具修理

家具修理のご依頼を時々いただく。思い入れのあるものを古くなっても修理して、さらに長く使っていくということはとても豊かなことだと思う。

そして、そのような方が確実に増えてきていると感じている。修理のご依頼、ご相談を頂くたびにぼくはとてもうれしい気持ちになる。
以前、長く使われているダイニングチェアの接合部のガタツキを修理し、さらに古い塗装を一度剥がして、木の風合いを活かしたオイル仕上げに変えて欲しいとのご依頼を頂いた。
椅子修理
ゆるくなった接合部を一度全て分解して古い接着剤を取り除き、接合の堅さを調整してパーツごとに組み立て直す。
椅子修理
椅子修理
椅子修理
古い塗装を剥がして、オイルで仕上げるととても柔らかく、温かい風合いになった。長く使われたものには新しいものには持ち得ない雰囲気がある。
先日、やはり古くなって接合部にガタツキが出てしまったダイニングテーブルの脚とイギリス製のネストテーブルの修理させていただいた。
家具修理
家具修理
今回も一度接合部を全て分解、調整し、組み直してゆく。
家具修理
ksグ修理
家具修理
家具修理
家具修理
家具修理
最後に剥がれかけていた塗装を補修して完成した。
見知らぬ土地で見知らぬ職人さんが作った家具が様々な物語を経て僕たちの工房にやってきて、またお客様の元に戻ってゆく。なんとわくわくする仕事だろう。
昨日、また一脚の古い椅子が僕の工房に運び込まれて来た。見たところ重症だ。お客様にとって思い入れのあるとても大切な椅子だと言う。なんとか綺麗に直して戻してあげたい。
takashi

マンション作り付け家具

 東京都江戸川区の新築マンションにAVボードと壁面作り付け家具を納めさせていただいた。

AVボード ウォールナット

AVボード ウォールナット

AVボード ウォールナット

AVボード ウォールナット

大きな窓のあるリビングにW2300のウォールナット材のAVボード。その向かい、巾4mの壁面いっぱいに作りつけたデスク、飾り棚には合計10灯のダウンライトと4口のコンセントを取り付けた。デスクの正面にはコルクボード、飾り棚の間の壁はタイル貼りとお客様のこだわりの詰まった家具に仕上がった。

壁面家具

壁面家具

壁面家具

壁面家具

家具の取付け作業が終わったとき、奥様に呼ばれ洗面所に行ってみると、そこには以前ご購入頂いたウォールナット材のスツールが置かれていた。とても小さな家具だけれど、家族の一員のように受け入れていただき、生活の場に馴染んでいる姿を見ると安心し、とても嬉しくなる。

ウォールナット スツール

takashi

角のみ

 「角のみが動かなくなった!」

突然、工房の向こう側から声が聞こえた。近づいていくと、材料にノミが刺さったまま
動かない状態でいる。

角のみとは木工機械の一つで、ホゾ穴加工をしたりするためのものである。
木工機械のなかでも、優しいタイプの機械で私は大好きな機械の一つ。

硬いナラ材を加工していたせいか、刃物を上下させる棒が完全に緩んで、棒を動かしても何も反応がない。。。時間はもう夜の9時を回ろうとしていた。

「どうしよう。加工しなければいけないものがあるのに…納期もう少しだな…」
そんな雑念を消し、二人でなんとか直す方向にあれこれと話しながら、機械をのぞく。

わたしは木工を初めて学んだことがひとつある。
なにかにぶち当たったとき、いかに解決するかを考えることだ。
ものを作ることは、何かと問題が発生しどうすればよいかを常に考え、その導いた
考えをもとに手を動かす。そしてその方向が間違っていれば、即別な方法を考え、また手を動かす。

まず、この機械はどのような仕組みで動いているのかを考え、
そこからなぜ動かないか、どこの部分に原因があるのかを追求していった。
決して楽しい状況ではないはずなのに、あれこれやっている状況になぜかわくわくしている
自分がいた。

「なんかフィジーみたいだなぁ。」

隣で、takashiがぽつりと言った。
彼は2年前フィジーで木工を教えていた。フィジーに行く前に聞いていた情報
とは違い、多くの機械が動かない状況で、まず機械を直すことから始まった話を思いだした。

一時間ほど経過しただろうか。
二人でこうじゃないか。ここ持っているから覗いてみて。
角のみが動かない原因に少しずつ近づいていった。なんとか、部品の一部を取り外した。

「あっ、やっぱり。」

予想していた通り、部品の一部であるステンレスの棒が完全に折れていた。
原因がわかれば、あとはそれを直すのみ。
少しほっとし、その日は帰宅した。翌日、となりの金属加工をしている小沢さんに
ステンレスの棒をもらい、機械は元通り動くようになった。

すべてを含めやはりものづくりは面白い。

kumiko

屋外用ローテーブル製作

先日、屋外用ローテーブルのご注文をいただいているご夫婦が「流しそうめん用の竹材を買ってきた帰り」とのことで工房にふらっと立ち寄ってくださった。

せっかく立ち寄って頂いたのに工房はここのところしばらく続いている忙しさで、展示スペースまでもが作業場と化していて、文字通り足の踏み場もないという状態。さらに屋外用ローテーブルはちょうど材料が揃い、これから製作に入るという段階で、まだお見せできるものもなく、少し立ち話をしただけになってしまったけれど、こうして気軽に工房に立ち寄っていただけることが本当にありがたく、とても嬉しいことだ。

先週から本格的にこの屋外用ローテーブルの製作に入り、だんだん形になってきた。脚はステンレス、天板はタイル貼りといううちでも珍しいデザインのもの。今まで何度もお会いし、いろいろなお話しをしてきたお客様からのご注文のものだけに、お宅のテラスによく合ういいテーブルになると確信している。

帰り際、工房の前の竹やぶに目をやった御夫婦は声を揃えて、

「竹や。。。」

わざわざ買ってこなくてもここにこんなにたくさんあったかと。そう、先にわかっていればここから切っていってもらえば良かったのだけれど。

これから気持ちの良い季節。テラスでこのローテーブルを囲んで流しそうめんやバーベキューを楽しむご家族の風景を想像してみる。最後まで丁寧に仕上げていこうと思う。

takashi

いつのまにか工房の周りの桜も満開。四月ですね。
 
わたしは北海道育ちなので、雪が溶け始めてアスファルトが半年振りに
顔を出すのが楽しみで、春が大好きでした。
ここ最近花粉症になり始め、今年はもさもさした雰囲気の春。
目がかゆく、鼻もむずむず。のどまで痛い。。。
わたしの育った北海道には杉花粉がないで、こんな気持ちで春を迎えるのは初めて。
 
でも、やはり何かが動き出している感じの春はやはりいいですね。
 
最近、桜材やチェリー材で家具を作りたくなっています。
春のせいでしょうか。
時間ができたらチェリー材を使って家具を作ろうと思っています。
前から考えていた土を一部に取り入れて。現在、構想中です☆
 
工房では、以前から取り組んでいる本棚を製作中です。
いつもは家具を置いているスペースも、今は作業場と化しています。。。
 
HALFMOON FURNITURE WORKSHOPも始めてから1年。
少しずつではありますが、ホームページからのお問い合わせや、ご近所の方からのご依頼も増えてきました。
一年前にここにきて、新たな気持ちでこの工房を始めたときのことを思い出します。
これからも、そのときの気持ちを忘れずに、日々丁寧に色々なことに挑戦し、取り組んでいきたいと思います。
 
2年目もよろしくお願い致します。
kumiko
 

ダイニングテーブル ”kurage"

建築家 宮原輝夫さんの設計した住宅に、宮原さんがデザインしたダイニングテーブルの
製作依頼をいただいた。当初、直線的な四角いテーブルと、曲線的なテーブルの2案のデザインがあり、シャープな四角いデザインのものになると思い、心の準備をしていた。
”どんでん返しで丸い方のテーブルに決まりました!”

気持ちを切り替え、決まった方のテーブルの図面とにらめっこ。
建築家やデザイナーさんからの仕事は普段自分たちが考えない発想のものが多く、
その製作方法を考えたり、想像しているものを実際に具体的な形にしていく過程が
難しくもあり楽しくもあります。
色々な道具を使い試しつつ、形を作っていく作業は、普段あまり使用しない道具も使い、悩みながらも楽しい作業となった。
脚の形状を目や手で確認しながら、何度も客観的に見てほぼ手加工で製作した。

先日、完成したテーブルを見に宮原さんとスタッフの谷口さんが工房まで来てくれた。

      
完成したダイニングテーブルを見て、
「イメージ通りです!」「かわいい☆」と、とても満足して頂きました。
このテーブルは「kurage」と命名されました。

ダイニングテーブル
                                                                                 photo:miyahara teruo 

建物を設計し、その空間の為にデザインされたダイニングテーブル「kurage」。
昨日、引き渡し目前の住宅に完成したテーブルを納品した。
その空間にとても馴染んでいる姿に生活の風景の一部が見えたような温かい気持ちになった。
宮原建築設計室:http://www.miyahara-arch.com/

kumiko

Raindogs

 ラジオから流れてきたアコーディオンのイントロに作業の手が止まった。Tom Waitsのraindogsだ。
ちょうど日が暮れ始めたころだったこともあり、窓の外の風景は一瞬にして彼のファンタジックな世界観に支配された。Tom Waitsの声の向こう側でマークリボーのギターの音がその物語の世界に道筋をつけるように鳴っている。

たった2分58秒、空想と現実の間の知らない場所を少し散歩してきたような感覚だった。
大好きで度々浸りたくなるTom Waitsの世界。ふとした時に思いがけず出会うのもいいものだ。

takashi

去年、別の目的で足を運んだ日本の手しごと展の会場でたまたま目にとまった手作りの鋏。
そのシンプルで品のある形、金属の重厚でいて温かみのある色味に見とれていると、その日
たまたま会場に来ていた作家さんご本人が話しかけてきてくれた。

僕と同世代ぐらいのその作家さんは、兵庫の「多鹿治夫鋏製作所」という手作り鋏の製作所の四代目で、量産のものが溢れたこの時代に、より多くの人に手作りの鋏を知ってもらい、使ってもらうことを目的に「TAJIKA」というブランドを立ち上げて作家活動をされているという。日本の職人は高い技術は持っているけれど、自分が前に出て発信してゆくことを嫌う傾向がある。だけどもう昔のように職人は影に引っ込んでいい仕事さえしていれば良いという時代ではなく、職人本人が前に出ていって、きちんと作られた良いものを少しでも多くの人に知ってもらう努力をしていく必要があると彼は考えている。
確かにそうだと思う。そうしないと本当に良いものが世の中から消え去り、日本は発展はしているけれど文化レベルの極めて低い国になってしまう。

うーん、この鋏欲しい。確かに一般的な鋏のイメージからすると相当高い。でも作る手間を想像すると決して高くないことも理解できる。そしてこのクオリティ。手にとってみると、その動きが本当に心地良い。特に刃物を閉じきる時の感触。完璧に調整されている。だけど、こんなにいい鋏が僕に必要だろうか。家具作りには使わないし。。。
僕たちは渋々その場を離れた。

会場を一回りして、帰ろうとエスカレーターで階を下っている時、ふとイメージできてしまった。工房の手道具がかけてある壁に一緒にあの鋏がかかっている姿が。居場所がイメージできてしまった以上、必要かどうかなんてもうどうでも良い。気がつくと下ってきたエスカレーターを引き返し、急ぎ足で(なにも急ぐ必要なんてないのだけれど)TAJIKAさんのところに戻っていた。

その鋏が僕たちの工房の風景の一部になってもう一年近く経つ。今でもときどき手にしてその向こう側に広がる世界を想像する。それは僕にとって日常の中の幸福なひと時になっている。
ちょうどお気に入りの本を本棚の片隅に持っている幸福感に似ている。
この度、大切な人への贈り物にこの鋏を新たに注文することにした。

takashi

 

 

atelier gallery

その空間に入った瞬間、外の世界とは全くちがう、そして時間の感覚さえ失う。
静寂さの中に弦楽器であろう音楽が流れている。
この神聖さはなんだろうか。
 
私たちが初めてここに訪れたのは一昨年の12月。
金属でものをつくる作家のアトリエギャラリー。初めて作品をみたとき、これが人の手で成し得る技なのか。。。と目を疑うほどだったことをいまでも忘れない。
ここの空間に入ると、言葉がでてこない。
作品の意味やつくりかたを考えることなんて、ここではナンセンスな気がさえしてくる。
作品そのものの存在が謙虚に主張している。そう、自然の木々や植物がそうであるかのように。
 
そこにある光、音、作品たち・・・すべてをゆっくり味わい、
いつか、彼の作品を自宅に飾りながら、美味しいコーヒーを旦那さんとゆっくり飲むことが
できるようになりたいな。
いや、まだまだ私たちには早すぎる。。。と思いつつ、アトリエを後にした。
kumiko

打ち合わせ

雪がまだ残る中、今日の午前中打ち合わせに行ってきました。
屋外用のソファを購入されて、それに合うテーブルを作って欲しいとのご希望で、
いくつかプランをもってご提案をさせて頂きに。
いつも通りの、明るい笑顔で奥様が迎えてくれ、紅茶とバームクーヘンをいただきながら、
まずは私たちの作っている小物について、少々談義。
毎日工房にこもってものを作っていると、視野が狭くなり客観的にものが見られなくなるときがあります。色々なものを見たり、経験されているかたの意見を伺うことで、新しいアイディアが生まれたり、
より洗練されたものにもなっていく。そして、そのやりとりが楽しいものです。
今年は家具以外にも力を入れていこう!HPももっと充実させよう!と、前向きな気分になりつつ
今日の本題へ。
プランを出すときは、5,6パターンかそれ以上考え、悩み、最後にこれだと思う1案をお見せすることが多いのですが、今回は全然違うパターンを3案。
屋外テーブル。この春には製作する予定です☆ 
素敵なテラスにHALFMOONの家具を置かせていただけることが、とっても嬉しく、楽しみです。
先週の午前中はAVボードの打ち合わせ。
AVボードは中に機器が入るので、コードの通し方、熱がこもらないようにと、機器との取り合いがあります。
ご主人と色々打ち合わせをしていくなかで、センタースピーカの入る部分に、家具に直接サランネットを張り込む仕様になりました。普通ならスピーカーを置き、そこがオープンになったりしますが、家具にサランネットを張り込むことで、AVボード自体が一つの機器になり、オーダーでしかできない仕様になっていきます。
お客様との打ち合わせは、使うこと、造ること、デザイン、バランスetc…
色々な角度から見て意見をだす場で、家具を製作していくうえで、とっても大切な時間です。
このAVボードもこの春に製作予定です。
この家具もきっとかっこよくなる、そう思っています。
 
kumiko
 

雪の日はいつもより時間がゆったりと流れているような気がする。
何をするにもひと手間増えるからその都度立ち止まる。必然的に動きが遅くなってちょうど良い。
車を動かす前にタイヤのまわりの雪を少し掘ったり、ガラスの雪を落としたり。雪にうまり、
手が冷えて、いつもなんとなく通り過ぎていく時間にもいちいち現実感が沸く。
そして、みんなそれぞれ何かを諦める。お気に入りの靴を履くのを諦めたり、寄り道を諦めたり。
お店をいつもより早く閉めたり。
僕も今日、納品を一件諦めた。その代わり工房での作業の合間に、コーヒーを淹れ、トムウェイツ
をかけて、いつもより少し長く窓の外の森を眺めた。
贅沢な一日だ。

こんなことを言うと、北海道出身の妻に
「雪のある生活はそんなのんきなものじゃない。」
と叱られそうだけれど。。。

takashi

お好み焼き

昨年末のこと、一度スツールを製作させていただいたお客様から何年か使っているダイニング
テーブルの塗装を直せないだろうかというご相談をいただいた。
「見に来るついでにお茶でも」
と妻と二人で呼んでいただいた。関西出身のお二人のテンポの良いやり取りがとても面白い、
なんとも暖かい雰囲気の素敵な御夫婦で、寺家回廊のときに初めて工房に来ていただいた時から
とても印象に残っている。

その日も広々とした陽当りの良いテラスでお茶を頂きながら、のんびりと楽しい午後の
ひとときを過ごさせた頂いた。あまりにリラックスしてしまい、肝心のダイニングテーブル
を見るのを忘れてそのまま帰ってしまいそうになったぐらいだ。

その日の関西の食べ物についての話題の中で僕のしたいくつもの失言。
「たこ焼きって、タコ入ってるんですか?」
「たこ焼きって、いつ食べるんですか? ご飯として? それともおやつ?」
「お好み焼き、特別食べたいと思うことないなあ。」
「お好み焼き定食??? チャーハンで白米食べるようなものですね。」

「?」

そんな僕のとぼけた発言に、僕がたこ焼きやお好み焼きを食べたことがないのではないか
という話にさえなってしまった。食べたことは、もちろんある。でも、子供の頃にお祭りの
屋台で食べたたこ焼きにタコが入っていたかどうか、覚えていない。特別美味しかったという
記憶もない。確かに大人になってからはたこ焼きを食べる機会はほとんどなかった。
関東にいる限り自分から意識を持って向かわなければ向こうからやってくるものではない。
関西の家庭には必ずたこ焼き器があって、ときどき人が集まったときなどにみんなで
焼いてたこ焼きパーティをするのだという。でも、たこ焼きは難しく、関西の人でも
毎回美味しくできるというわけではないらしい。4~5回に一回ぐらいしか成功しない
のだとか。それだけ高い理想があるのだろう。でもなんか楽しそう。
そしてご主人は関西風のお好み焼きがどういうものかを丁寧に説明してくれた。
たくさんのキャベツとほんの少しの小麦粉、つなぎは山芋。上に豚肉を乗せて、最後に
ひっくり返したら強火で。小麦粉をほとんど使わないからとても軽くて、表面は豚肉の
脂で揚げたようにカリッとしているのだとか。

ん?僕が今まで食べてたお好み焼きはそんなんじゃなかったな。なんだかとても美味しそう
じゃないか。僕の知っているお好み焼きは、たくさんの小麦粉でキャベツとか肉とか、
どろどろに混ぜて焼いた、ホットケーキに具を混ぜたみたいなものだった。それは、
本当のお好み焼きを知らない関東の人間が、イメージだけで適当に作ったものだったのだろうか。
ご主人のお話を聞いて確信した。本物は美味しいに違いない!

その日の夜、たまたま近所の同業の友人と食事をすることになった。
「何食べましょうか。」
「あ、お好み焼き、食べられるとこありましたっけ?」
近くの鉄板焼き屋さんに入ることにした。もちろんお好み焼きを注文。目の前で焼いて
もらって、食べる。まあまあ美味しかったけれど、今日の話の感じとは少し違うような
気がする。本物はもっと美味しいはずだ。一度大阪行かなきゃだめかな。それからしばらく
本物のお好み焼きのことが気になっていた。

ご相談をいただいたテーブルの塗装直しはうちでやらせてもらうことになり、再度引取りに
お伺いすることになった。その前日、お客様から電話を頂いた。
久しぶりにお好み焼きでも作ろうかということになったので、テーブルの引取りのついでに
一緒にお昼をどうかとのお誘いだった。なんともありがたいお誘い!喜んでご一緒させて
いただくことにした。

翌日、お昼にお宅にお伺いすると、キッチンでは着々とお好み焼きの準備が進められていた。
たくさんのキャベツと少しの小麦粉、山芋。確かに僕の知っているドロドロのものとは
だいぶ雰囲気が違う。そこに牡蠣、エビなど贅沢な具が加えられる。見るからに美味しそうだ。
妻と二人でキッチンの周りをうろうろ、お好み焼きの準備を眺めつつ、奥様のコレクション
の素敵な陶の器や木のカトラリーなどを見せてもらう。
そして、テーブルにつき、ご主人が次々と焼いてくれる出来たてのお好み焼きをいただく。
上にはカリッと焼けた豚肉。箸で切れるぐらい、が丁度いい焼き加減だそうだ。
確かに箸で切れる。口に入れると、おお!表面はカリッと、中からキャベツの甘みが
広がって、そして贅沢な魚介類の具。おいしい!本当に軽くて、いくらでも食べられる。
今まで僕が知っていたものはなんだったんだろう。。。お好み焼きのイメージがすっかり
変わる体験だった。止まらなくなった僕は一人で四枚も平らげてしまった。
お腹も満たされ、すっかり満足して、あやうく肝心のダイニングテーブルを持って帰るのを
忘れるところだった。

お預かりしたテーブルはもともとの塗膜を一度剥離し、新たに塗装し直した。年末のご家族が
揃う時期にもなんとか間に合って、とても喜んでいただけた。

お客様からはその後もときどきご連絡を頂き、僕たちの小物製作へのアドバイスやアイデアを
いただいたりしながらお付き合いさせていただいている。ただのもののやり取りを越えた、
顔の見える対話はものづくりの原点だと思う。製作者としてこれほど幸せなことはない。

takashi