昆虫の季節

この間、近所で小カマキリを拾った。
小さいけれど完全なカマキリの形。首をくるくる回して警戒している。
うれしくなって工房に持ち帰る。
手のひらに乗せて、つぶさないように気をつけて、そうっと歩いて工房に着いた途端、逃げられた。

そういえば、2ヶ月程前にアレックスの畑の腐葉土からざくざく出てきたカブトムシの幼虫たちは今頃どうしているだろうか。そろそろさなぎになっている頃だろうか。もう一度掘り起こしてみたい衝動に駆られたけれど、やめた。

先日、田植えを終えた矢口さんが工房にやって来て、田んぼに蛍が飛び始めたことを教えてくれた。
工房の軒下には蜂が巣を作り始めている。
昆虫たちが活動的になる季節。楽しい気持ちになる。
今日は一日、現場で家具の取り付けをしてきた。夕方、外で休憩しているとカミキリムシの一種か、変なやつが僕のほうに近づいてきた。

威嚇のつもりなのか、背中にイスラム帽を被った埴輪みたいな顔が描いてある。人間から見れば全然恐くない。なんてのん気な姿だろう。それにしても不思議だ。何がこういう進化をさせるのか。
僕たちの日常のすぐ傍にこんな陽気な世界が広がっていると思うと笑えてくる。
takashi

チェリー材のベッド

チェリー材のベッドを納品した。
春のよく晴れた日。心地よい風が部屋の中に吹き込み、完成したての家具を設置。
          ベッド
シンプルだけれど、一つ一つ打ち合わせを重ね、生まれてきた寸法や形。
いつもお客様とは色々なお話をしながら、家具のことを決めていく。そして、それぞれのお客様が大切にしていることを感じ取る。
形を考えるときも、製作している途中も、その大切にしていることをいつも意識している気がする。
もちろん、自分たちが大切にしていることも。
価値観が多様化し早く時が流れていく昨今、少しずつでも私たちが大切にしていることを表現していきたいと思います。
kumiko
 

お仏壇

これまで何度もお邪魔しているお客様の家に、ご依頼いただいたお仏壇を運び入れる。
寺家町に工房を構えた最初の年からお付き合いさせていただいているとても明るいご家族。この日も夕飯の準備をして待っていてくれた。何だか親戚の家に遊びに来たようなあたたかい気持ちになる。
とはいっても、家具を運び込むこの瞬間はいつもどきどきする。お客様のものに対するこだわりがとても強いこともよく知っている。いつも期待していてくれていることも。そしてその期待は超えなければいけない。
       手作り仏壇
       手ずく裏
床の間にお仏壇を設置すると、ほんの少しだけ部屋の空気が変わった。
静かな雰囲気だった。
美しい。それがお客様からいただいた最初の言葉だった。お客様のご要望、機能、僕たちの作りたい形、部屋の雰囲気、様々な要素が組み合わさって出来上がった必然的な美しさだと思う。
すっかり安心した僕たちは、ものすごくおいしい手料理を囲んで、あたたかく幸福な時間を過ごし、気が付くとまたいつものごとくすっかり夜も更けていた。
この後、新たにダイニングテーブルと木のトレー(こちらは2年も前から)製作のご相談もいただいている。ハードルはどんどん高くなってゆく。
takashi
 

デスク、カウンターチェア納品

以前、halfmoonオリジナルのダイニングセットを製作させていただいたお客様から新たにカウンターチェアとデスク製作のご依頼をいただいた。
デスク
 
用途に合わせた機能、サイズを検討し、ダイニングテーブル、椅子と雰囲気が合うようデザインを詰めていった。
カウンターチェアは1/5サイズの模型を作り、立体的な形を検討した上、原寸図、実寸の試作を製作し、高さや座り心地、デザイン的な細かい収まりなど修正を重ねて本製作に進む。
        カウンターチェアー
カウンターチェア
思えば、月に一度の工房オープン日にご夫婦でお越しいただいてから、こうしてものづくりを通してお付き合いさせていただいている。ものをつくるということを大切にされている方々との貴重な出会いに日々支えられている。
takashi

春の風景

カサカサカサ、
ザッ、ザッ、ザッ
工房の前の竹やぶから聞こえる物音に耳を傾ける。
毎年、僕たちの工房に春の訪れを告げる心地よく乾いた音。
隣の小沢さんがタケノコを求めて藪の中に分け入る音だ。

表に出て声を掛ける。
「どうですか?」
「だめだな。。まだ早いな。」
毎年繰り返される全く同じ会話。
この感じが好きだ。なかなか採れないところも。
今日、小野路の友人のところに行った。山の中のとても気持ちのいい場所だ。
満開の桜が雨の後の湿った空気に包まれていた。
用事を済ませて帰ろうかというとき、タケノコがたくさん出ているから掘って行かないかという。
僕たちの工房のタケノコはまだ出ていないというのに。。
藪に入ると確かに、ざくざく掘れる。掘れる。

家に帰って灰汁抜き。早速筍ご飯と煮物にしていただいた。
小沢さんはまだありつけていない。このことは内緒にしておこう。
takashi

チェリー材のベッド

「ベッドの製作をされたことはありますか。」
と電話で問い合わせを頂き、工房で打ち合わせをしたのが去年の秋。
なかなか条件の合う既製のベッドがないとのことで、オーダーすることを検討しているとのことだった。
工房から遠くない平屋の一軒家。
数年前に建て替えたとのことで、綺麗に塗られた漆喰の壁と無垢の床材、手入れのされたお庭が印象的だった。お客様の雰囲気に合うベッドのデザインと要望を満たすものをご提案させて頂いた。
樹種は優しい雰囲気のアメリカンチェリー材。
細かい部分がわかるよう簡単なモックアップを作成したり、何度か打ち合わせを重ねた。
ものから感じる”独特の雰囲気”。そんな家具になるよう、いつも頭の片隅であれこれ考える。出来上がったものの風景といままで感じた場所やものの匂いや感覚を頭の中で照らし合わせてみたりする。
途中、椅子の製作などでお待たせしてしまいましたが。。。なんとか、製作開始。
製材されただけの無垢材を見ながら、どの木目をどの部分に使うのがよいかを考えながらの木取り。緊張とわくわくした気持ちが入り混じったなかでの作業となっていく。
     
     ベッドヘッドに使う丸棒。
お客様との対話を通して作られていくベッド。
これから製作の日々。丁寧に取り組んでいこうと思う。
kumiko
 

工房の床落ちる

僕はゲジゲジが割と好きだ。
大きく足を広げて壁に張り付くその姿は、見慣れない人にとっては気味の悪いものかもしれないけれど。
以前、僕の住んでいた海の近くの古い平屋は、ゲジゲジの多く出る家だった。玄関に、キッチンに、寝室にも。いつも、いる。
僕も最初は彼らに出会うとその姿にぎょっとして、仕留めなければと、戦う姿勢をとっていた。しかし、いくら僕が攻撃しても彼らは決して反撃しては来ず、ただただ逃げて回るだけだった。そのあまりに弱く、はかない姿にだんだんかわいそうな気持ちになり、攻撃することをやめ、共存していくことに決めた。
一度受け入れてしまえば何てことはない。その姿にもすぐに見慣れ、僕の座るすぐ横の壁にいようと、ベッドの脇にいようと、一つも気にならなくなった。
もちろん森に囲まれた僕の工房にもゲジゲジは多くいる。
冬の間ほとんど見かけなかった彼らに先日突然出くわした。それも一度にかなりの数に。
「お、こんなとこにいたのか。」
それは床板を剥がし、逆さになって床下に顔を突っ込んだときだった。
       
去年から一番大きな機械を置いている場所の床が落ちてきていることには気付いていた。日に日に下がってゆき、見た目ではっきりと大きく落ち窪んでいるのがわかるまでになった。そのうち抜けるのではないかとさすがにこわくなり、とりあえず機械は別の場所に移動して、早くへこんだ床を剥がして直さなければと思いつつも日々の忙しさに追われ、見てみぬふりをする日々が続いていた。
先日、さらに大きな機械を搬入することになりその前日、意を決して傷んだ床を剥がしてみた。
「あああ。。」
       
妻と2人で唖然とした。床下に土間をうっていないので湿気で大引が腐り、機械の重さで潰れていた。
もう日が暮れる時間だった。明日には大きな機械が入ってくる。なんとしても今日中に直さなければ。
ゲジゲジたちに会ったのはそんなときだった。床の裏にのん気に張り付いている彼らの姿になんだか穏やかな気持ちになった。
夜中の3時頃、ようやく大引、根太を新しいものに交換し、床板を張り戻した。明日機械を設置する予定の場所の床下は、見ていない。そうそう簡単に動かせる機械ではないけれど。まあ、なんとかなるか。
       
       
これから日に日に暖かくなってゆく。虫たちが動き始める季節。工房の床下もにぎやかになっていくのかなと、想像すると少し楽しくなる。
takashi
 

新店舗のための椅子

今春、日本初の店舗を横浜にオープンした北米発のアパレルブランド。『KIT AND ACE』。
ここのブランドは、地域の作り手やデザイナーにオリジナルの照明や家具を依頼し、世界各地で個性豊かな店舗作りをするというコンセプトがあり、今回、横浜店の椅子のデザインと製作の依頼を受けた。
HALFMOON FURNITURE オリジナルチェアを、ここのブランドイメージに合わせて再デザインすることから始まった。色は白またはアースグレー。そして銅。というのが条件。
ここのブランドから感じた印象は、シンプルかつエレガント。そして、素材の質。HALFMOONの椅子がよりエレガントになるように、限られた時間の中で、試行錯誤し最終的に提案させて頂いたのが、これです。
         
HALFMOONオリジナルチェアの背に『KIT AND ACE』のロゴを銅で入れる。
本社のカナダからの了承も得、「KIT AND ACE」仕様のHALFMOON オリジナルの椅子の製作が始まった。

銅のロゴもはまり、白く塗装された椅子は無事完成。HALFMOONオリジナルチェアとは違う雰囲気で凛と佇んでいた。
海近くの赤煉瓦倉庫のそばで、この椅子たちは日々、多くのお客様を出迎えているのだろう。
「KIT AND ACE」 MARINE & WALK YOKOHAMA
http://www.kitandace.com/locations/yokohama-marine-and-walk
kumiko
       
 

まる3年。

HALFMOON FURNITURE WORKSHOP をここ寺家に構えてから3年が経ちました。
本当に少しずつですが、私たちの目指す「対話をしながらのものづくり」をする機会も
増えてきました。
わたしたちに家具の製作を依頼してくれるお客様。
とても頼りになる材料屋さんや塗装屋さん。
色々な人たちの力が合わさり、ひとつひとつの家具ができ上がってきました。
忙しい日々が続くと、初心を忘れがちですが私たちが大切にする「ものづくり」を日々していけるよう
4年目も取り組んでいきたいと思います。


kumiko
 

日常

晴れた冬の日曜日。
花粉も飛び始め、北海道出身のわたしにとってはもう春のようだ。
3月にオープンするカフェの家具作りをしている。
そこのオープニングパーティで音楽演奏を頼まれた。数年振りにギターを手にしている。
          
集中しているのを邪魔するのもなんだし、私は午後、工房へ行くことにする。
来週いよいよ大きな木工機械が入ってくる。それの準備でまるで引っ越しのような状態を整理しに。
新たな機械が入ってくるのが楽しみだ。
kumiko
 

灯り

「あかり」
”光と影”がうみだす奥行がとても好き。
室内は少し暗いけれども窓の向こうに日本庭園が広がる南禅寺天授庵の風景。
幻想的な光の演出があったノマディック美術館。
光のあてる方向で様々な表情をだす「手漉き和紙」。
 
いまでも時々思い出す。
 
日々の生活の中に、どのような「あかり」をつくっていくか。
心地のよい「あかり」ってなんだ。
と考えたりします。日本の住宅事情ではどれだけ太陽の光を室内に入れるかが大切で
昔の日本建築のようにはいかないのが現状です。
 
そこで。
 
照明によって「あかり」をつくっていく。
必要なところに、必要な明るさを。
先日ペンダントライトを新たに設置し、わたしたちの小さな空間も少し心地よくなりました。
 
すぐに茶碗を洗うようになりました。
料理をし、毎日掃除をするようになりました。
 
そこが、「あかり」の影響によるものかはわかりませんが。。。
でも好きな家具を使うのと同じぐらい、どのような「あかり」を作るかは
心地よい時間を過ごすには大切だということを、日々の生活で感じています。
 
              
 
始めてのペンダントライト。これなしでは夕食は食べられませんっ。
 
次はスタンドライトを設置予定です。
いつか、HALFMOON オリジナル照明もつくりたいです。
 
kumiko

16の笠木たち

ずらりと並んで僕を待っている。

ダイニングチェア笠木

16脚の椅子の笠木たちが削られる準備をして待っている。
みんな違う16種類の別の顔。どの顔もそれぞれかわいい。
takashi