インスタグラムを見るともなく見ていると、子供がうたう歌にどきっとして目が止まった。
”ありさんとありさんとこっつんこ。あっちいってちょんちょん こっちきてちょん。”
これだけシンプルな言葉で、誰もが知っている光景を浮かばせる。なんという描写力だろう。
普段なかなか目が向かなくなっている世界や、思い出すことがなくなっている風景をふと思い起こさせてくれる言葉の表現。
好きだなあ。
takashi
HALF MOON FURNTURE WORKSHOP (ハーフムーン ファニチャワークショップ) 横浜市青葉区寺家町にある注文家具工房です。小物や椅子、キャビネットなどご要望に応じて、一つ一つ丁寧に設計・製作しています。
インスタグラムを見るともなく見ていると、子供がうたう歌にどきっとして目が止まった。
”ありさんとありさんとこっつんこ。あっちいってちょんちょん こっちきてちょん。”
これだけシンプルな言葉で、誰もが知っている光景を浮かばせる。なんという描写力だろう。
普段なかなか目が向かなくなっている世界や、思い出すことがなくなっている風景をふと思い起こさせてくれる言葉の表現。
好きだなあ。
takashi
川の探検家のおじさんに出会った。
なぜ彼が探検家だとわかったかというと、首から小さなボートの首飾りを下げて(首飾りとしては大きかったかもしれない)、「ぼくは探検家だ」「今日は漕ぎ出すのに最高の日だ」と外国語でプリントされた、よれよれのTシャツを着ていたからだ。
その探検家のおじさんは、毛糸の帽子をかぶって遠くの川を見ていた。たぶん。そこに川はなかったから、本当のところはわからないけれど、たぶん川を眺めていたんだと思う。首からボートを下げていたし、Tシャツには「今日は漕ぎ出すのに最高の日だ」と書いてあったから、僕はそう思った。丸い眼鏡の奥で、優しいような、悲しいような目をして、なんにも言わず、ただ静かに川を眺めていた。
おじさんのそんな姿をしばらく見ながら、ぼくは想像していた。おじさんはボートに乗って川を探検したことなんて、本当は一度もないのかもしれないと。いつも探検家のTシャツを着て、一人森を歩いて、川の見えるところまでは来るのだけれど、そこまで来ると足を止め、あの静かな目で川を眺めて、でも川には降りられず、来た道を引き返してしまう。そんなことをもう何十年も繰り返している。
探検家ってどんな仕事だろうか、と考えてみる。知らない世界を旅してきて、その世界を物語にして僕たちに話して聞かせてくれる仕事。だとしたら、おじさんはその佇まいとあの眼差しだけで、間違いなく本当の探検家なんだと思う。
その姿をしばらく見ていただけで、知らないところを旅をしてきたような、それくらいたくさんの風景を見られたような気がする。
takashi
最初に工房にお越しいただき、ご自宅マンションのリフォーム工事に合わせての造作家具製作のご相談をいただいてから半年近くのプランのやり取りを経て、キッチン背面の収納家具、玄関収納を納品させていただいた。
不思議なことに、ゆっくりとしたペースで時間を置きながらやり取りを進めていくうちに、実際にお会いする回数以上にお客様の大切にされていることが自然に感じられるようになり、お客様にも僕たちの価値観が伝わっているなと感じることがある。
オーダー家具のようにそれぞれのお客様のご要望、用途に合わせて、実体のないものをプランし、作り上げていく場合、お互いの信頼関係が築けるかどうかがとても重要になってくると思う。
そういう意味でも今回は、お客様のご要望と僕たちが良いと思うものがいいバランスで融合できて、この出会いの中でしか出来得ないものになったと実感できる製作になった。
取り付けの日、
家具がやってくるのをとても楽しみにしてくれていたお子さん。取り付け作業中もウキウキした様子だったけれど、
作業が終わるまでは待ちきれず、
寝ちゃった。
takashi
毎年10月にここ寺家町で開催される「寺家回廊」。
寺家町に点在する工房やアトリエ、ギャラリーが同時に展示を行い、近隣の方や、ものづくりに興味のある多くの方がたに毎年お越しいただいています。イベントの中で、全ての会場を訪れた方の中から抽選で、参加するそれぞれの作家の作品が当たるという企画があります。
先週、昨年10月に私たちの作った"木の小物"が当たったという年配の女性が工房を訪れてくれました。
わたしはちょうど不在で、残念ながらお会いすることはできませんでした。。
主人曰く、わたしたちの作ったものが届き「とっても嬉しくって嬉しくって。」お礼にと、保湿用クリームと裁縫に使う針刺を手作りして、奥様にと、わざわざ届けてくださったとのことでしてた。
日々の作業のことを思い、選んでくれたクリーム。丁寧に作られた針刺し。
とっても暖かな気持ちになりました。大切に使わせて頂きます。
直接お会いし、お礼をいうことができずに残念でしたが、また寺家回廊でお会いできるのを楽しみにしています。
一年に一回の寺家回廊。
日々の仕事ではお会いする機会のない人たちとも、色々なことをお話できるこの機会は製作の糧になります。
kumiko
現在、開催中のミラノデザインウィーク。super studio内のbudbrandの展示ブースに、茅ヶ崎松尾建設とHALF MOONのコラボレーション作品「Mobile Drawer」を出展しています。
茅ヶ崎松尾建設の多大なご支援のもと、この展示会に出展する機会をいただきました。
今年のbudbrandの展示作品テーマは「モバイル(=可動性)」。
このテーマに沿った作品をプラン、製作し、出展するというもの。
昨年末から、松尾建設の青木社長とアイデアを出し合い、打ち合わせを重ねてきた。ラフプランを作り、一つの方向が見え始めたところで煮つまり、立ち止まり、いまひとつ抜け出せないでいた時、青木社長の「引き出し、持ち歩けたら面白いんじゃない?」という一言から一転、一気に走り始めた。
普段家具として使っている引き出しを時にカバンとしてそのまま持ち出せたら、効率的でありながら、ちょっと楽しくなるような可笑しさのあるものになるのではないかというアイデア。それを日本の伝統的な家具で、軽さが一つの特徴である桐たんすの要素と融合し、木製引き出しでありながら、カバンとして持ち歩けるほどの軽さを実現した。
本体形状はカバンとして持った時に体になじむよう曲面にして、さらに持ち運び用の本体天面と底面にヌメ革を貼り、体へのあたりが柔らかくなるようにしている。
引き出しつまみを回すと、両側から金物が出てきて、引き出しが開かないためのストッパーとなり、そこに革ベルトを通して持ち歩くというもの。
今回、工房での製作の都合で、どうしても現地に行くことはできなかったけれど、この機会に多くの人に見て、触れていただければ嬉しい。
takashi
リビングルームに巾1800x高さ2400の壁面収納を製作させていただいた。
テレビボード、オーディオラック、レコード収納棚を兼ねた大型家具。
庭に面したリビングの印象は、雨の日に本を読みながらのんびり過ごしたくなるような空間。
シンプルで機能的でありながら柔らかい雰囲気の家具にしたかった。
納品後にお客様からのメールで、リフォーム工事を経て広くなったリビングスペースにこの家具が入ったことで中心ができて、空間にメリハリがついたとのご感想をいただいた。なるほどと思う。それは生活空間における家具の一つの大きな役割だと改めて気付かされた。もちろん家具そのものの使い勝手の良さや見た目、インテリアとして空間に合っていることはもちろん重要だけれど、それ以上にそこにその家具があることで空間の中で人がしっくりと落ち着き、生活がより心地良いものになってくれたらそれ以上のことはない。それも家具で空間全体をつくる一つの形なのだと思う。
takashi
久しぶりにblue note tokyoに出かけた。菊地成孔ペペ・トルメント・アスカラールを聴きに。
それにしても今月のブルーノートはすごい(少なくとも僕にとっては)。最初はBuikaの公演が1日だけあることを発見、これは絶対に行かなくてはと思ってスケジュール表をなんとなく見ていると、なんとその前日まで3日間Roy Hargrove、翌日からは2日間、菊地成孔ぺぺ・トルメント・アスカラールの公演予定が入っているではないか。。全部行きたい。。でも、連日では記憶が薄まるからBuikaだけにしようと興奮気味の僕に対して妻は、いいよ、とは言いながらもなんとなく覚めた様子。あれ、と思い、よくよく聞いてみると実は菊地成孔を聴きに行きたいのだという。そうかと思う。ぺぺ・トルメント・アスカラールは僕にとっても、数ある菊地成孔のプロジェクトの中でも一番好きなバンド。あっさり予定変更。ぺぺに決めた。
僕にとっては二度目、妻にとっては初めてのぺぺ・トルメント・アスカラールのライブ。以前観たオーチャードホールでのライブは素晴らしく音が良かった。11人編成の複雑に絡み合う全ての楽器の音がはっきりと聞こえていたのを覚えている。
今回はブルーノート。狭い会場で見られるのもとても楽しみだった。会場に入ると平日の1st setだったということもあり、菊地成孔のライブとしては珍しく空席が目立っていた。一番安い自由席で予約していたけれど、空席があったのでプラス¥1,000払ってステージ前のアリーナシートへ。
11人がずらりとステージに上がる。このバンドのそうそうたるメンバーの中でも群を抜いた演奏力の持ち主、日本を代表するパーカショニストの大儀見元さんも復帰している。しばらく固定されていなかった(お金がなくて雇えなくなっていたらしい)1st,2ndバイオリン、ビオラ、チェロの4人のストリングスも今回のツアーから再び正規メンバーとして固定されたという。菊地さん曰く、バンドはとてもいい状態だそう。
一曲目からすっかり引き込まれていた。曲目は「南米のエリザベステイラー」以降4枚のアルバムからの抜粋。聴きたいところが次々と演奏された。
それにしても菊地成孔は日本人のジャズミュージシャンとして、世界のどんな巨匠たちと並んでも引けを取らない唯一無二の魅力を持った稀有な存在だと思う。決して世界の一流とは言えない彼自身のサックスの演奏力や歌唱力さえも魅力的に感じさせるほどの独自の世界観を表現できる作曲、構成、アレンジ力、アイデア。世界中の音楽の要素を日本人として取り込み、緻密に作りこんでまとめ上げたクオリティの高さ。全ての楽器の魅力がそれぞれ活かされながら一つの世界が作り上げられている。
ラテンのリズムを生み出す2人のパーカッショニストの目の前でクラシック出身の弦楽四重奏団が演奏していて、それらがどちらかのカテゴリーに寄るというのではなく、全く別次元で融合しているバンドなんて世界中探しても他に無いのではないかと思う。
アンコールを含めて1時間半ぐらいだっただろうか、終始、聴き惚れ、見惚れ、心から思った。格好良い。
takashi
3年も前から「作ってよ」と言われ続けていた木のトレーをようやくお届けすることができた。
ずっと気にはなりつつも、なかなか形にできずにいた。
お客様はものに対するこだわりがとても強く、本当に気に入ったものを使いながら、日常の時間を大切にされている方で、特に食事に対する姿勢はとても丁寧で、味はもちろん、器、盛り付け、配置全てに気を配った食を日々大切にされている。
和にも洋にも合うもので、お盆というよりはランチョンマットに近いものがご希望だった。
イメージして、試作をしてみるとどうも違う。その度に向かう方向を見失い、なかなか見えてこないまま時間ばかりが過ぎていった。その間にも何台かの家具を作らせていただき、食事をご馳走になり、奥様のお気に入りの器などを見せてもらいながら色々な話をしてきた。そしてメープルのダイニングテーブルを作らせていただいた。ここに並ぶ6枚のトレー。材料はウォールナットに決めた。
日々使うもの。奇抜なものはいらない。料理を飾るフレームのようなもの。材料の風合いを活かしたシンプルなものにしたかった。
ようやく完成した木のトレーを納品した時のお客様の喜び方は特別だった。これまで家具を作らせていただいた時も、いつも心から喜んでいただいてきたけれど、それ以上だったように思う。
しばらく経ってご主人から伺った話しによると、奥様はご主人が大切にされている車にキズをつけても全然気にしないのに、このトレーに関してはほんの小さなキズも気にしてるとのこと。まあまあ、使っていればキズはついて当然なので、あまり気にしすぎないでいただきたいけれど、そこまで気に入っていただき、大切にお使いいただいているということが本当に嬉しかった。
takashi
椅子の生活をしているけれど、寝るときは畳に布団がいい、という人は結構多いのではないかと思う。
今回のお客様も和室はないけれど、畳の上で布団で眠りたいとのことで、セミダブルサイズの畳ベッド製作のご依頼をいただいた。
畳をベッドに使う場合、従来の藁床の畳だとカビやダニなどが発生するリスクが高くなるため、畳床に檜チップを使用し、天然素材の柔らかさと耐久性を両立するように開発された畳をベッドサイズに合わせて特注した。
布団の場合、マットレスのように厚みが出ないため、ヘッドボードを含めて全体の高さを低めに抑えたデザインでまとめることができた。
思えばちょうど2年前の工房オープン日に初めてお越しいただき、ダイニングセットのご依頼をいただいてから、一つずつ家具を作らせていただいてきた。実際に使いながら繰り返しオーダーいただけるというは本当にありがたく、作り手としてとても幸せなことだと、つくづく思う。
takashi
今朝の工房はキリッとした寒さだった。
コーヒーを淹れようと、水道をひねる。
出ない。
おお、
凍ってる。
これまで寒さが今ひとつ物足りなかっただけに少し嬉しくなった。
そういえばと思い、池を覗く。
やっぱり。凍っていた。この冬初だ。
いつものように小石を投げてみる。
ぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょっぴょっぴょっ。
凍った池全体が共鳴するような心地よい音。
ふと思う。この氷結構厚いんじゃないか。乗ってみたい。
池に降りて日にあたっていないところを選んで片足を踏み込んでみる。いけるかも。
体重を乗せてみた。
バシャっ
嵌った。冷たい。こんなに簡単に割れるとは。。
もう少し寒い日が続いたらもう一度試してみようと思う。
takashi
あけましておめでとうございます。
旧年中の多くの素敵な出会いに感謝致します。
思えば昨年あたりからようやく私たちも、日々の製作の合間に映画を観に行ったり、展覧会に出かけたり、休日に本屋さんやレコード屋さんを物色したり、という時間が持てるようになってきたように思います。今年もそういった時間を大切に、日々様々な感覚を磨きつつ、家具製作に活かし、half moonの世界を創り上げて行けるよう努力していきたいと思っております。
毎月第四日曜日のオープン工房も続けていきますので、是非お立ち寄りいただければ幸いです。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
小栗 崇/久美子
丸テーブルとダイニングチェア製作のご依頼をいただいた。
お客様こだわりの小さめの丸テーブルは、幕板も天板と合わせた曲面で、とのご希望だった。
ダイニングチェアはHALF MOONオリジナルのものを合わせることにした。
テーブル、椅子ともに材料はナラ。テーブル幕板の曲面は、薄く削った無垢材を積層して作ることにした。半円の型を作り、そこに厚み2mmに削った材料を添わせ、12層重ねて接着。
天板の厚み、幕板を天板端から何ミリさげるか、脚の太さやテーパーの形状等、細かい寸法バランスは特に慎重に検討した。これまでとは少し違った手応えがあった。
takashi