「角のみが動かなくなった!」
突然、工房の向こう側から声が聞こえた。近づいていくと、材料にノミが刺さったまま
動かない状態でいる。
角のみとは木工機械の一つで、ホゾ穴加工をしたりするためのものである。
木工機械のなかでも、優しいタイプの機械で私は大好きな機械の一つ。
硬いナラ材を加工していたせいか、刃物を上下させる棒が完全に緩んで、棒を動かしても何も反応がない。。。時間はもう夜の9時を回ろうとしていた。
「どうしよう。加工しなければいけないものがあるのに…納期もう少しだな…」
そんな雑念を消し、二人でなんとか直す方向にあれこれと話しながら、機械をのぞく。
わたしは木工を初めて学んだことがひとつある。
なにかにぶち当たったとき、いかに解決するかを考えることだ。
ものを作ることは、何かと問題が発生しどうすればよいかを常に考え、その導いた
考えをもとに手を動かす。そしてその方向が間違っていれば、即別な方法を考え、また手を動かす。
まず、この機械はどのような仕組みで動いているのかを考え、
そこからなぜ動かないか、どこの部分に原因があるのかを追求していった。
決して楽しい状況ではないはずなのに、あれこれやっている状況になぜかわくわくしている
自分がいた。
「なんかフィジーみたいだなぁ。」
隣で、takashiがぽつりと言った。
彼は2年前フィジーで木工を教えていた。フィジーに行く前に聞いていた情報
とは違い、多くの機械が動かない状況で、まず機械を直すことから始まった話を思いだした。
一時間ほど経過しただろうか。
二人でこうじゃないか。ここ持っているから覗いてみて。
角のみが動かない原因に少しずつ近づいていった。なんとか、部品の一部を取り外した。
「あっ、やっぱり。」
予想していた通り、部品の一部であるステンレスの棒が完全に折れていた。
原因がわかれば、あとはそれを直すのみ。
少しほっとし、その日は帰宅した。翌日、となりの金属加工をしている小沢さんに
ステンレスの棒をもらい、機械は元通り動くようになった。

すべてを含めやはりものづくりは面白い。
kumiko