自宅の改修と家具 ~ その2

2021年の春、築40年の古屋に住み始める。私たち夫婦2人と犬1匹の暮らしが始まった。

改修を始めるまでの1年間、間取りをどうするかの前に、木造の古い家をどこまで手入れする必要があるのかを暮らしながら確認していった。まず、前オーナーが残してくれたこの建物を建てているときの写真をじっくりと何度も見返した。お風呂は基礎を1m以上の高さで打っているようだから、すぐにやり直す必要はないと判断。写真から床下は捨てコンをしていること、実際に床が沈んでいる様子もないので大幅にやり直す必要もないと思った。ただ、素人の判断なので早い段階で、お世話になっている工務店の方に家に来てもらい実際に内部と外部を見てもらった。屋根裏も覗き、断熱材(当時はグラスウール)が落ちている様子もない。木造の古い家だと、実際にリフォームをし始めると見えない部分で老朽化があり、費用がかさむことがある。カビ臭かったり、床がフワフワしていたりすると注意が必要だ。建物はしっかりと作られメンテナンスもされていたので、大きな修繕は考えずに間取りの検討を始めていった。

家はL字型、1Fは和室とLDKの2部屋と洗面浴室の構成。今回は1階のみ改修することにした。

「よし、まずは壁を一部壊して階段がどうなっているか見てみよう。」

「和室の天井を外したら、梁がどうなっているかわかるかな。当時の写真から見ると綺麗なピッチで入ってそうだけど。」

「吹き抜けの壁の一部を開口にしたらどうかな。 のこぎりで開けてみよう。」

予想通り、階段のササラは綺麗なラワン柾目無垢材、和室の天井も覗いているみると梁も無垢材でよさそうだ。元々の建物が持っているポテンシャルを生かし、私たちが心地よく住むにはどうあるのがよいか。生活をしながらじっくりと考えていった。

心地さを感じる要素の一つに、外と繋がっている「窓」との関係が大切だと個人的には思っている。窓からは光が射し、視線も抜ける。キッチンに立ってるとき、リビングやダイニングで座っているとき、窓がどのような位置にあるとよいか。もちろん、生活動線だったり、他の事柄との関係性もあるのでそう単純ではないけれど。「窓」との関係を重視しつつ、プランを詰めていく。

和室をキッチン+ダイニングスペースへ改修、LDKはキッチンを撤去し一室にし、吹き抜け部分の壁を開口し2階とも繋がるようなプランとした。

仕上げもほぼ決めて、改修工事は職人さんもみんな知っている飯石建設にお願いすることにした。よく、「自分たちで改修工事もしたのですか。」と聞かれることがある。もちろん、やってやれないことはないけれど、その道でずっとやってきた職人さんたちにお願いしたほうが、綺麗だし早い。そして、何よりその仕事を見ることはとても興味深く、楽しい。私たちは家具のみ造ることに専念した。

担当してくれた大工さんはとても腕のよい”菊地さん”。日々、目の前で進んでいく菊地さんの仕事は、予想以上に素晴らしかった。毎朝工房に出かける前に、チラッと菊地さんの仕事を見ていつも思っていた。

「魔法使いのようだな。」

数年経った今でも、その姿を思い出すとワクワクした気持ちになる。

その3 へ続く

kumiko