頼りない天使

犬と一緒に暮らすようになってからもうすぐ4年になる。思い返せばその間、ほとんどの時間を一緒に過ごしてきた。あっという間だったなと思う反面、もっともっとずっと前から一緒にいたような気にもなる。

僕は子供の頃から家には犬や猫のいる環境で育ったので、犬と一緒に暮らすということがどんなものか、ある程度わかっていると思っていた。でも、実際に自分で犬を迎えてみると全く違っていた。それは僕が知っていたものよりもずっと楽しいことだった。犬は「天使」のようだと思う。とは言っても僕は天使のことをよく知らないので、ただのイメージだけれど。たぶん、どんな犬も飼い主にとって「天使」のようなのだろうと想像する。とにかくその純粋さにいつもハッとさせられる。常に真っ直ぐに、怒って、笑って、怯えて。全力で走って、食べて、うんちして、眠る。

うちの犬は結構野性味を残したそこそこ大きな雑種で、獣を見れば本気で追いかける。工房の前でハクビシンを捕らえたこともある。山の中を散歩すれば、茂みの中の生き物の気配に夢中になって突進してゆく。この頃は、僕たちには全く感じられないけれど、土の中ではもう春の動きがあるのか、土を掘ったり、茂みに入ったり、興奮気味だ。

そんな野生の感度を持った犬が夜になれば、僕たちの布団の中に入ってきて、全ての警戒心を解いて無防備に眠る姿は、まるで子犬のようだ。というよりむしろ熊のぬいぐるみのようだ。朝は僕たちが起きた後も一人で布団を被ってぬくぬくと眠っている。犬は早起きなものだと思っていたけれど、必ずしもそうでもないらしい。

強さと弱さと、成熟さと未熟さとを併せ持っていて、儚くも透き通った「頼りない天使」というイメージがぴったりくる。

FISHMANSを聴きながらそう思う。

takashi