
3年も前から「作ってよ」と言われ続けていた木のトレーをようやくお届けすることができた。
ずっと気にはなりつつも、なかなか形にできずにいた。
お客様はものに対するこだわりがとても強く、本当に気に入ったものを使いながら、日常の時間を大切にされている方で、特に食事に対する姿勢はとても丁寧で、味はもちろん、器、盛り付け、配置全てに気を配った食を日々大切にされている。
和にも洋にも合うもので、お盆というよりはランチョンマットに近いものがご希望だった。
イメージして、試作をしてみるとどうも違う。その度に向かう方向を見失い、なかなか見えてこないまま時間ばかりが過ぎていった。その間にも何台かの家具を作らせていただき、食事をご馳走になり、奥様のお気に入りの器などを見せてもらいながら色々な話をしてきた。そしてメープルのダイニングテーブルを作らせていただいた。ここに並ぶ6枚のトレー。材料はウォールナットに決めた。
日々使うもの。奇抜なものはいらない。料理を飾るフレームのようなもの。材料の風合いを活かしたシンプルなものにしたかった。
ようやく完成した木のトレーを納品した時のお客様の喜び方は特別だった。これまで家具を作らせていただいた時も、いつも心から喜んでいただいてきたけれど、それ以上だったように思う。


しばらく経ってご主人から伺った話しによると、奥様はご主人が大切にされている車にキズをつけても全然気にしないのに、このトレーに関してはほんの小さなキズも気にしてるとのこと。まあまあ、使っていればキズはついて当然なので、あまり気にしすぎないでいただきたいけれど、そこまで気に入っていただき、大切にお使いいただいているということが本当に嬉しかった。
takashi