先日、近所のカフェ&ギャラリー寺家スタジオで行われたラウテンクラヴィーアの演奏会に行ってきた。奏者はチェンバロ演奏家で、製作者でもある山田貢先生だ。
ラウテンクラヴィーアは、リュートの響鳴体を持つガット弦のチェンバロで、バッハも愛用していたというが現存する楽器はなく、僅かな資料が残るだけの幻の楽器だという。80歳になる山田先生は長年僅かな資料からこの楽器を研究され、自ら復元し、演奏をしているラウテンクラヴィーア研究の第一人者だ。
もともとは、先生が散歩の途中、たまたま僕たちの工房に立ち寄っていただいたことがきっかけで知り合った。いろいろなお話を聞かせていただくうちに、その物語の世界から飛び出してきたような、どことなく空想的な佇まいにすっかり魅せられていた。

チェンバロを囲むように椅子が配置された会場はとてもあたたかな雰囲気に包まれていた。それにしてもこんなにチェンバロが似合う演奏家が他にいるだろうか。山田先生ご自身の世界観がチェンバロのもつそれとぴったりあっている。それはバロック時代を思わせるとかそういうことではなく、現代において、この場所で、とても自然に調和している。
音楽にとって(音楽に限らず全ての表現においてかもしれないけれど)一番大切なのは世界観だと思う。どんなにテクニックのある演奏でも世界観がなければそれはただ正確な音の羅列に過ぎず、全く心に響いてはこない。
音楽にとって(音楽に限らず全ての表現においてかもしれないけれど)一番大切なのは世界観だと思う。どんなにテクニックのある演奏でも世界観がなければそれはただ正確な音の羅列に過ぎず、全く心に響いてはこない。
二時間ほど、山田先生のあたたかな世界にとっぷりと浸って、充ち足りた気持ちで工房に帰る。一歩間違えばすれ違うことすらなかったかもしれない。偶然の積み重ねの途中で思いがけず出会えたことがとてつもなく幸運なことに感じる。
takashi