
三軒茶屋Obscura Coffee Roasterが駅にほど近い場所に新たな店舗”HOME”をopenさせることになり、その家具製作を担当させていただいた。
全体の店舗デザインはこれまでにも何度も一緒に仕事をしているstudio gd。
計画段階からObscura側から全体の雰囲気のイメージとして「土っぽい素材感」というキーワードが上がっていた。それは彼らがいつもコーヒー豆を仕入れているアフリカの農場や周辺の建物の素材に通じるイメージだった。
以前から探っていたあえて表面を平滑に仕上げず、荒木の凹凸を生かした無垢材の使い方が今回のイメージに合うのではないかと考えた。
表面を平滑に仕上げた木の深い艶と違い、ざらっとした荒々しい木肌は光を吸収して柔らかな奥行きのある質感が表れる。今回は厚みのあるラワンの無垢材をこのような仕上げ方で使いたいと考えた。サンプルを作り提案したところとても気に入って頂き、広い店舗全体にラワン無垢材をふんだんに使ったデザイン案がまとまった。
大きな木製建具の入り口を入ると両サイドにコーヒー豆などを並べる大きな壁面収納。正面にカウンターとその奥にオープンな厨房スペースが広がる。カウンターでコーヒーを注文して店内で過ごしたい人は隣の空間に移動する。そこは淡いピンクがかった漆喰壁に包まれたしっとりと落ち着いた空間が広がっている。壁に沿って分厚い無垢板のベンチがずらっと並び、Obscuraが長年集めてきたアフリカの民具が散りばめられ、土っぽく荒々しい素材感と落ち着いた上品さが調和した心地良い空間になっている。エチオピアのコーヒーテーブル、インドのスツール、今回製作したベンチ、それらを各々が好きな場所に移動させて好きな場所で自由に過ごす。季節や時間帯、天候、絶えず移り変わる明るさ、目の前の通りの風景、その時々に流れる時間を楽しめる新しい感覚の素敵な客席のあり方だと思う。




Obscuraはいつも表と裏を区別しない。バックヤードやスタッフルームだからといって家具の仕様を落とすことはせず、お客さんに使ってもらうものと同じものをスタッフにも提供して裏方であってもできる限り気持ちよく過ごせるように考えられている。
そういうスタンスがObscuraのコーヒーから滲み出る丁寧さに繋がっているのだと思う。
takashi