比較的真面目に家具作りをしているつもりでいる。基本的には古くから受け継がれてきた正統的な技法を使って作り、仕上げている。無垢の木をカンナで削った木肌に現れる複雑な色味や深い艶は見飽きることがない。
一方でそうやって作った家具は堅い印象にもなりやすい。もう少し自由な雰囲気が出せないものかと思うことがよくある。
以前、ショールームの床材を自作した時、バンドソーで製材した際に付いた鋸刃の跡を削り落とさずにそのまま残して仕上げてみることにした。当初は木目と直行して無数に走る鋸刃の跡のテクスチャーがおもしろいのではという狙いだったけれど、実際に床に敷き詰めてみるとそれよりもその凹凸による光の反射にとてもおもしろい効果があった。正確には反射というより吸収。柔らかく光を含んで、ふわっとした質感に感じられた。
これを応用して家具の仕上げにも使えないものかと模索している。カンナで平滑に削った艶やかな仕上げとは全然違う無垢の奥行きが生まれるのではないかと思っている。
studio gdのデザインで現在進行中の三軒茶屋OBSCURA COFFEEの新店舗。今回その家具を担当させていただいている。
計画段階から全体の雰囲気のイメージとして「土っぽい素材感」というキーワードが上がっていた。それならここのところ模索している無垢の荒さを残した仕上げ方が合うのではないかと考え、実際の材料でサンプルを作って提案したところ、とても気に入っていただいてこの方向で進めることになった。
同じ豆でも精製方法や焼き方で全く別の魅力を引き出すコーヒーの世界。アイデア次第で木もそれに近い活かし方ができるのかもしれない。



takashi