
ナラ無垢材 w2130 x d930 x h700
家具を作るとき、これからお客様の日常の記憶を刻みながら長い年月をかけて変化してゆく様子を想像したり、それを一つの魅力として説明したりすることがある。
だけど、当然それはこれから作るものにだけ当てはまるわけではない。そこで役目を終える家具がある場合、そこにも必ずたくさんの記憶が刻まれているということを忘れてはいけないと改めて思う。
大倉山のカフェroofのダイニングテーブルもそうだった。34年間使ってきたとのことで、ご家族の様々な日常の記憶、カフェをはじめてからは、たくさんのお客様がそこで過ごした時間の記憶を刻んできたのだと思う。
最初は新しく作るのではなく、天板のみの作り替えなどの可能性も探ってみたけれど、最終的にはこれから長く使うことを考えて、今回は新規で製作させていただくことになった。
大きなイメージチェンジは必要ないと思った。もともとのテーブルの丸みを帯びた柔らかなイメージに少し近づけるために丸脚のデザインとして、印象を少し合わせることで今までの記憶を継承しながら新たなスタートとできればと考えた。シンプルでバランスの取れた良いテーブルを目指して、部材の寸法、脚の太さなど、細かく検討してゆく。シンプルな分、木目の選び方も全体の印象に大きく影響する。roofの内装、店主ご夫妻の雰囲気を想像しながら、目の詰んだ上品な柾目のナラ材を選定した。オーダー家具を製作する場合、その家具が置かれる空間に合うかどうかと同じくらいそれを使う人に似合うかどうかも考える。それがオーダーでものを作る面白さでもあるように思う。


出来上がったテーブルはお店の雰囲気にも自然に馴染んでいて、店主ご夫妻にも似合う良いテーブルに仕上がったと思う。
takashi