楢材のキャビネットとメープル材のキャビネット

東横線、大倉山駅の近くにあるCAFE 『ROOF OKURAYAMA』のキャビネット収納を製作させていただきました。

工房オープン日にお越しいただき、その後わたしたち2人で置かれる場所を見にCAFEに伺いました。

線路脇の丘を登ると、中庭に大きな木のあるとても気持ちのよいCAFEで、北欧の建築家”アアルト”の設計する住宅を彷彿させるような雰囲気でした。

お客様のご希望は、長年使ってきたキャビネットと同じ機能が欲しい、扉の一部を白くしたい、将来的には2つに分けて使うことを想定したいとのことでした。どの部分を白とするか、全体の機能を考えながらラフスケッチで何パターンか検討していきました。最終的には楢と白は"面"で分けるのではなく、"立体"として分けていくことを提案しました。楢材の板と、楢材の箱、白い箱がそれぞれ重なっていく構成です。その立体構成で楢と白の配置をデザインに落とし込んでいきました。また、立体で素材がわかれていることで、どの角度からみても同じ印象になります。

経年に伴い、長く使い込まれた他の家具と馴染み、このCAFEの風景の一部となっていくことを想像するととても楽しみです。

そして納品後の工房オープン日、平塚にお住まいのROOF店主の弟さんご夫婦が工房にお越しくださいました。お店でキャビネットをご覧いただいたとのことで、似たデザインのキャビネットの製作のご依頼をいただきました。ご希望はすべてメープル材、引き出しは4杯ほしいとのことでした。

このキャビネットは本体と扉には、無垢材を薄く削ったもの(t1.5~2mm)を表面の材料として製作していきました。メープル材のもつ固有の魅力をキャビネットの形の中で表現できるよう、木材の選び方と木目の配置にはとても時間をかけました。

納品したお客様のご自宅は、高い丘の上にあり、ダイニングの窓にはまるで小さな模型をみているような風景が広がっていました。新幹線の線路、小さな家々、大きな空。その窓のとなりにメープルのキャビネットは設置されました。

リビングにはご夫婦の大切にされているたくさんの小物や作品が壁や棚の上に置かれ、それにまつわるお話を楽しく聞かせて頂きました。

大切につくられたり、年月が経って過ごしたものにはそれぞれ自然と物語が生まれると思います。

わたしたちのような『つくっている人』を知ってくれることで、その物語が少し楽しいものになればいいなと思います。

建物の窓は外の風景を切り取るものですが、家具は内部の風景を作るとものだと思いながら、日々家具をつくっています。

kumiko