
胡桃の飾り台 w1900 x d350 x h700 (展示品あります)
数年前からずっと胡桃材を使ってみたいと思っていた。
普段よく使っているナラやチェリー、ウォールナットと比べると胡桃は柔らかく、強度の面でも硬い材料と同じ感覚では使えない。
かといって強度を保つために単純に部材寸法を太くすれば、その優しい木目も相まって、野暮ったい印象になってしまう。
ある意味では使い方がとても難しい材料でもあるけれど、その柔らかさがとても魅力的に思えていた。特に天板に使えば物を置いたときの当たりが心地良いに違いないと思った。
馴染みの材料屋さんには常々相談していたので、北海道産の胡桃材が入ったときはすぐに声をかけてくれた。ある程度まとまった量の胡桃材を買った。買ったは良いけれど、これで何を作ろうか、、特にすぐに使うあてもなかったのでしばらく手をつけられずにいた。
そんな材料の山の中にひときわ目を引く板があった。これを活かすようなものを作ろうと思った。
巾は350mmぐらいの耳付きの板で、荒々しい節を持ちながらも木目は繊細で上品。色味もとても深い褐色だった。どこも切り落としてしまうのがもったいないほどの板。隅々まで全て使いたいと思った。普段であれば平らな面を出すために機械である程度厚みを削って使うけれど、今回は厚みもなるべく薄くしたくなかったので、機械は使わず、手カンナで平面を出して仕上げることにした。
荒木からひたすらカンナで削りまくる、気の遠くなるような作業。でも削るほどに現れてくる美しい木目と深い色に嬉しくなる。
天板が耳付きの有機的な形状である分、全体の印象としてはあまり重たいものにはしたくないと思っていた。かといって脚には金属を使うのではなく、全て木で作ろうということは決めていた。妻と二人で様々な形の可能性を探った。途中まで進めながら、イメージ通りの結果にならずやり直したりもした。最終的には脚は柾目の板を使って、できるだけ薄く見えるような加工をし、幕板がRを描き板脚に吸い込まれていくようなデザインとした。



オーダーで家具を製作する場合、お客様の機能的な要望が中心にあって、それを満たすことを前提とした上で、美しさなどを追求していくことが多いけれど、今回は使いたい素材が先にあって、それを最大限に生かすためにベストだと思う形を探っていくという別のアプローチでの製作となった。
僕たちの思う一つの答えは出せたような気がする。
takashi