勉強机

勉強机 デスク

海を背にしばらく進んだ最初の大きな交差点、その角の建物の2階にお二人のお店はあった。

もともとは向かい合わせで鉄板焼き屋さんと家庭料理屋さんをそれぞれ営んでいたお二人が結婚して一緒に始めたのがこのお店だと聞いたことがある。僕たちがご夫婦と知り合ったのは今から8年ほど前、松尾建設の青木社長に連れて行ってもらった時が最初だった。どこまでも明るいご夫婦とたくさんの常連客で賑わうとても活気のある鉄板焼き屋さんだった。そして何よりお二人の仕事がとても丁寧で、出てくる料理はどれもとても暖かで優しい味だったことを印象深く覚えている。

その後、茅ヶ崎ストーリーマルシェの立ち上げメンバーとして共に呼んでいただき、定期的にお会いするする機会ができた。その頃お二人は息子さんの誕生を機に繁盛していたお店を閉め、お惣菜屋さんとして新たな形で再スタートしていた。形を変えてもお二人の料理に対する丁寧な姿勢は何一つ変わらず、食べた人の心も満たしてくれるような優しいお惣菜だった。お二人とお会いしてお話をするのが毎回のマルシェでの一番の楽しみになっていった。ジャンルは違うけれど、ものを作る姿勢について学ぶことが多かった。

そんなお二人から小学校に入学した息子さんのための勉強机のご依頼をいただいた。ここ数年はお会いする機会が少なくなっていたので久しぶりにご連絡をいただいたことがとても嬉しかった。

ご依頼内容は、息子さんが大人になっても使い続けられる勉強机。大まかなイメージだけをお伝えいただき、あとは全てお任せいただいた。

明るいご家族に、シンプルだけれど軽快で動きのあるデザインが似合うと思った。材料はナラ材と決め、旋盤で挽いた丸脚を4方向に傾斜させ、真ん中には小さな引き出しを一杯設置する構成でバランスを整えていった。立体的なイメージをより詳細に検討するために1/5サイズの模型を製作した上でデザインを最終決定した。

無垢デスク

勉強に飽きた時、そのまま突っ伏して天板にぺったりと頬をつけると少しひんやりとして気持ち良いと思う。鉛筆で端から木目をなぞっていくのも楽しいかもしれない。彫刻刀の使い方を覚えたら、天板に顔とか彫ってみたり。昼間にふざけて笑いながら彫っていた顔が、夜になって恐ろしく見えてきて、三角刀でじゃみじゃみ消そうとしたら余計に怖くなったり。

楽しい思い出をたくさん含んでくれるといいなあと思う。

takashi