居心地のよさとかゆったりとした時間の流れというのは、空間の広さと比例している訳ではないと思う。以前、中村好文さんの展覧会へ行ったときにもそんなことを思った。
今年に入り、リビングとキッチンを間仕切る家具のご注文を頂いた。
このお客様のご自宅も、そんなことを感じさせる空間だった。家具の配置がバランスよく、色合いも落ち着いていて、とても心地よい時間が流れていた。
キッチン側は家電や食器を収納するための必要寸法を守りつつ、リビング側は飾るスペースを設けた間仕切り家具。お客様のご要望を考慮しつつ、縦のラインの間に、素材の違う箱(本革やガラス、木)がぽこぽこあり、箱の一部が飾るスペースとなっているデザインの家具をご提案させて頂いた。樹種はお客様のご希望で落ち着いた雰囲気のウォールナット材を使用した。


両面使いの家具のため、一つ一つの加工の際、寸法ミスなどがないよういつも以上に、何度も図面で確認しながらの製作となった。家具を製作する場合、一番最初に行うのが「木取り」という工程。無垢の場合でも突板合板の場合も、まずどの部分を家具のどこに使うかを考え、ある程度の寸法に材料を切っていく。木には木目があるので、この工程は家具の表情にかなり影響する。
わたしたちがお客様に直接合い、色々とお話をするようにしているが、「木取り」作業をする際、お客様との雑談がとても役に立つ。このお客様だったら、この木目かなぁ。と、考えながら木取りをしてく。どの家具も製作中は、何度もご依頼頂いているお客様の顔を思い浮かべる。
今回は、あまりワイルドにならないよう、節のある部分は見えない場所に使用するなど、できるだけご依頼いただいたお客様の雰囲気に合うように木目の配置をした。

ご主人のご希望でもあった一番の特等席(リビング側の右上)には”CD”が配置され、奥様がセンス良くものを飾って、(もちろん家電や食器も納まり)始めて家具として機能するのだろう。リサラーソンの陶器のライオンくんはいま頃どこにいるのかなぁ、なんて想像したりする。
納品が終わり、ご主人が「今年の楽しみが終わっちゃいました」と。。。
わたしにとっても、今年最大の製作が終わっちゃいました(まだ、3ヶ月ありますが。。。)
kumiko