Miles

お正月休み、窓の外は快晴の冬空。あたたかいコーヒーを飲みながら、
久しぶりにゆっくりDVDを観て過ごした。

その中の一本 “The Miles Davis Story”。
マイルスがチャーリー・パーカーやガレスピーを追いかけてジャズの世界に入っていく
ビバップの時代から始まり、その後早いコードの展開に早いソロで音を埋め尽くす方向に
進んでいくパーカーやガレスピーと逆行し、どんどん音をそぎ落とす方向に進み、
ビル・エバンスと組んで、名盤”Kind of Blue”を発表する。
その後も自ら作り上げたスタイルを次々壊しながら、新しいスタイルを生み出し続けていった
マイルスのミュージシャンとしての一生を綴ったドキュメンタリー映像。

その中でピアニスト、キース・ジャレットが、”マイルスは過去のものにしがみついていい演奏
をするぐらいなら新しいものを創造しながらひどい演奏をするほうがましだと思っていた”
というようなことを言っていたのが印象的だった。
自分の創作意欲とどこまでも純粋に向き合い、評価されていたものを自ら壊して先に進んでゆく
エネルギーと信念。

改めてKind of Blueを聴いてみる。全ての音に神経が行き届いているその演奏は、張りつめた
緊張感があって聴いているこちらも一音たりとも聴き逃してはいけないような気になる。
それにしてもなんて美しいトランペットの音色だろう。

こんなに美しい声で静かに、強く”So what”と叫ぶトランペットをかまえたマイルスの
細身のシルエットが浮かぶ。

takashi