約4年ぶりに僕の木工の師の仕事を手伝った。
「師」などというと、丸眼鏡をかけた、職人気質の無口なおじさんを想像されるかも知れない。
でも、僕の師は丸眼鏡なんてかけていないし、職人気質という印象ともだいぶ違う、物腰
のやわらかな人だ。第一、おじさんではない。僕と歳の近い、いい友人でもある。(30代も半ば
なのでおじさんと言えなくもないけれど)

僕が初めて家具製作の仕事に就いた注文家具屋の工場の中でもひときわ華奢な体つきの
職人らしくない身なりの彼から、僕は木工に関するほとんどのことを教わった。
たびたび僕のミスをフォローしてもらい、何度も2人で徹夜をした。
彼の判断力、的確な手の入れ方にはいつも感心させられた。そして何より、ものづくりの楽しさを日々教えてもらっていた。

その後僕はその会社を離れ、フィジーに渡り、2年後に帰国して自分の工房を持った。
日々ものづくりをする中で、迷ったとき、困難な場面に直面したとき、自分の仕事を振り返るとき、
常に彼の存在を意識してきた。

久しぶりの師匠との仕事は、以前と全く変わらない、心地よい緊張感と和やかな空気の中で
はかどり、順調に進んでいった。彼のゆっくりとした、でも無駄のない、きちんと考えられた動き、
的確な判断力は相変わらずだった。

普段なかなか会うことがなくても、大切な人の存在にはいつも勇気付けられ、支えられている
ということを改めて思い出させてもらった。

takashi