床の間ケヤキ板再生

ケヤキ板 リメイク

 

家を手放すことが決まったとき、生前のお母さまの言葉が気になっていたという。
「この床の間の板は良い板だから家を壊す時にはこれで何か作りなさい。」

ゼロからものを作り出すことも素敵なことだけれど、人の想いを形にして残してゆくこともとても大切な僕たちの役割だと考えている。そうやって作られたものは一冊の本のように様々な風景を想像させてくれる。


井の頭公園のすぐ脇のその古い一軒家は取り壊されるのを静かに待っているように見えた。もう随分前に結婚してここを離れて暮らしているご姉妹にとっては生まれ育った場所、たくさんの思い出が詰まった特別な家だった。
玄関の引き戸が閉まる時のガラスが鳴る音、家に入ったときの匂い、廊下の軋む感触、窓の外の空気、そういう1つ1つから僕の知らないいろんな風景が浮かぶんだろうなと想像する。

 

玄関を入ってすぐ右手の和室。その床の間には聞いていたとおり、とても立派なケヤキの板が使われていた。なるべく無駄なく使いたい。傷めないように慎重に、釘を一本一本抜きながら取り外してゆく。この家の一部を再生させて残し、受け継いでいこうというご姉妹のご意向がとてもうれしかった。

 

持ち帰った板を良く見て、どんな材料がどのくらい取れるのかをよく検討した結果、素材の表情を活かした2台のサイドテーブルに作りかえることに決め、製作はスタートした。

代わりの材料は存在しない想いの詰まった板。慎重に木取りをして、無駄なく最大限に使いたい。その製作はとてもわくわくするものだった。古く黒ずんだ板を削っていくと綺麗な木目が現れる。家を建てたときに大工さんが施した反り止めの加工の跡はあえて落とさずに残すことにした。それもこの板に刻まれた一つの歴史であり、その丁寧な仕事が、この板がこうしてここに来て、そしてこれからも生きてゆくことになった一つの大きな要因のような気がしたから。丁寧に加工された材料、そこに刻まれた風景、それを残そうというご姉妹の想い、そこにほんの少しの手を加えることで出来上がった一つの形。

 

 

 

 

 

 

 

ケヤキ板 リメイク

 

この家具があの古い家の風景へと繋がる入り口になってくれるといいと思う。

 

takashi