ふと立ち止まり、
手を触れて、その物語に想いを馳せてみる。
その先にゆったりと広がるもう一つの世界。
そこはやわらかな木洩れ日で満たされていた。
SHOW ROOM OPEN:毎月第4日曜日 13:00〜17:00
HALF MOON FURNITURE WORKSHOP (ハーフムーン ファニチャ ワークショップ)
横浜市青葉区寺家町にある家具工房。家具修理やオーダー家具を設計・製作しています。
11月24日(日)工房OPEN致します。
HALF MOON FURNITURE WORKSHOP
OPEN : 毎月第4日曜日 13:00〜17:00
今月も工房オープン致します。
小さなスペースですがオリジナル家具の展示をご覧いただけます。
家具のご相談や工房にご興味のある方は、お気軽にお立ち寄りください。
お待ちしております。
※一部の展示品を現品販売しております。
すべて一点ものになりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
- 2019.11.15 Friday
- 23:51
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レケティからの電話
メッセンジャーでビデオ通話の着信があった。レケティのナイオからだった。そういえば今日はラグビーフィジー代表が日本で試合をしている日だったか。
メッセンジャーにこんなこんな機能があったことをはじめて知った。ずいぶん世界が近くなったものだ。僕が住んでいた頃、レケティには電気が通っていなかった。発展途上国のそんな地域でもvodafoneがジャングルの中にアンテナをたくさん立てて、島中のほとんどの場所で携帯電話は使えるようになっていた。電気がないから充電の問題はあったけれど、通話機能しかなくあまりバッテリーを消耗しない小型のnokiaを使っていたので、発電機かソーラーでときどき充電してさえいればそれで充分だった。あれから8年、今ではレケティにも電気が通ったと聞いている。スマートフォンも急速に普及しているようで、インスタグラムやフェイスブックで多くの友人たちの現況をリアルタイムで知ることができるようになった。
予想通りナイオたちは、ラジオでラグビーの中継を聞きながらカバを飲んでいた。真っ暗なポーチで、ランタンの灯りひとつで地べたに座ってカバのボールを囲む光景があの頃と何一つ変わっていなかった。今はレケティにも電気が通っているはずなのに。
カバに酔うと光がとても鬱陶しくなる。心も体もどろんと地面に吸い込まれるような感覚で、話すのも面倒になる。酔いが回るにつれてランタンの光さえまぶしくなってどんどん火を小さくしてゆく。最後には蝋燭の火よりも小さく絞ったかすかな火を囲んで目を閉じてただ座っている。時折誰からともなくかかる「タロ」という低い掛け声を合図にカバを混ぜる水の音が響き、順番に回ってくるボールを飲み干してまた目を閉じる。何人もの大男たちが真っ暗闇で何時間もただ黙って目を閉じている。そんなことが毎晩、僕の家で夜中まで続いていた。それがレケティの日常だった。僕はそんな時間を結構気に入っていた。
あれは何時だったのだろうか。真夜中だったのか、朝方だったのか。一番最後に帰って行ったのがフランクとナイオだったことは覚えているけれど、そのあとどうやってベッドに入ったのかも覚えていない。開けっ放しの窓から差す朝の光で目が覚めたとき、まだ体にはカバが残っていてずっしりと重たかった。僕の家の裏のパパイヤの実がちょうど熟していたのを思い出して朝ごはんにちょうど良いと思って裏口を開ける。昨日まで間違いなくついていた4つの果実のうちオレンジ色に熟しているものだけが無くなっていた。また取られた。僕のパパイヤをいつも狙っているのは裏隣の家に住んでいるナイオだった。昨日の夜、帰りに採っていったに違いない。ここでは勝手に生えてきた植物でも、それは一番近くの家の住人に属すと考えられ、断りなしに取っていくことはタブーとされていた。だからそのパパイヤは明らかに僕のだし、裏口付近の地面に生えていたパクチーや唐辛子、表の椰子の木とナスも僕のということになっていた。それなのにナイオは僕のパパイヤを「俺たちのパパイヤ」と呼んで、いつも僕が採ろうと思っている直前(熟してから僕が採るまでの間)に勝手に採っていった。
その日はどうしても食べたかったので、ナイオの家に取り返しに行くことにした。どうせまだ寝ているだろうから起こしてやろうと。予想に反してナイオはもう起きて朝ごはんのロティを焼いていた。
「おはよう。中に入って朝ごはんを食べていけよ。」
あたたかい紅茶を淹れてくれて、焼きたてのロティと熟したパパイヤを半分。
そうそう、これ。でも、と思う。
ナイオには奥さんと子供が4人いる。僕がパパイヤを半分食べれば残りの半分を6人で分けることになる。まあ、そもそも僕のパパイヤなんだから別に良いはずなんだけど、、
「これは子供たちにあげてよ。」
いざとなると遠慮する僕に
「そんなこと気にするな。食べろ食べろ。」
と聞かない。
しばらくナイオと昨夜のカバの話をして過ごす。あれはムンドゥの畑で採れたカバで、レケティ産のカバの中でも特に強いものだとか、隣村からやってきた長身のパトゥが一番最初に潰れて逃げ帰ったこととか、フランクは相変わらず強かったとか(ここではカバに強いほど尊敬された)、いつもと何一つ変わらないどうでもいいような話題で2人で大笑いしていた。冷静に考えれば何にもおもしろいことなんてないのに、不思議ととても幸福な朝の時間だった。
取られたパパイヤを取り返しに来たことも忘れ、気がつけばそれ以上にご馳走になって、すっかりくつろいでいた。
電話越しのナイオのなつかしい声に思い出されるのは、特別なことは何も起こらない、日々繰り返されるなんでもない日常の風景だった。そして、そんな日々がこの8年間変わらずに繰り返されてきて、これからもきっとそうだろうことに安心する。
takashi
10月27日(日)工房OPEN致します。
HALF MOON FURNITURE WORKSHOP
OPEN : 毎月第4日曜日 13:00〜17:00
今月も工房オープン致します。
小さなスペースですがオリジナル家具の展示をご覧いただけます。
家具のご相談や工房にご興味のある方は、お気軽にお立ち寄りください。
お待ちしております。
※一部の展示品を現品販売しております。
すべて一点ものになりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
- 2019.10.24 Thursday
- 01:13
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TVボードとローテーブル
TVボード ナラ無垢材+本革
家具の製作を何度かご依頼頂いたお客様を通じて知り合った方から、TVボードとローテーブルを作ってもらいたいとのお話を頂いた。一度工房へお越しいただき展示してある家具や工房内の材料を見ながら、どのような雰囲気の家具にするか、どのような機能が必要かを雑談を交えながら大まかなことをお伺いし、こちらで具体的なプランをすることとなった。お客様はまだ若い方で現在はお住まいが賃貸のため、これから先様々な使い方ができる家具になるようサイズや仕様を考えつつプランを進めた。TVボードに関しては、節あのあるワイルドなナラ材を機能を満たしつつ、綺麗に見えるディテールと全体のバランスを考えるのにずいぶん時間を要した。
上の左右は引き出し、真ん中はAV機器が入るようにし、下側は本を入れる仕様で間仕切りは本革とした。引き出しのつまみも同じく黒の本革で製作。
ローテーブルは脚を鉄とし、天板は節あり無垢材で製作。
わたしがお客様と同じぐらいの年齢のとき、当時のわたしにとっては高価だったガラスのキャビネットを初めて購入したことをちょうど思い出した。お気に入りの家具に好きな本や小物を飾ったりし、生活が楽しくなったことを覚えている。何度か引越しもしたが、移動した場所場所での過ごした時間や風景、そのときの記憶が家具と共に蘇ってくる。建築家の堀部安嗣さんが「建築が人の記憶を継承するものになること」これも建築の大きな役割だと思うと本で書いていますが、わたしが経験したように家具もその役割を持つものになると思う。
これから先、移動もするであろうこの家具たちがお客様と共に過ごした時間や風景を継承するものになり、日々の生活が楽しめるものの一つになっていくことを想像すると、製作した身としてとても嬉しい。
kumiko
2019 寺家回廊 10月13日14日
第13回 ART & CRAFT 寺家回廊
わたしたちの工房がある寺家町には絵画・陶芸・版画・木工などの
工房やギャラリーが点在しています。
毎年開催される「寺家回廊」では、作家のアトリエやギャラリーを
公開し作品の展示や販売、ワークショップなどを行います。
この寺家回廊にHALFMOON FURNITURE WORKSHOPも参加します。
里山の景色が広がるここ寺家の工房へ、この機会に是非お越しください。
HALFMOON FURNITURE WORKSHOPでは家具やスツールなど販売しています。
第13回 Art & Craft 寺家回廊
2019.10.11 fri. - 10.14 mon. OPEN 10:30-17:00
HALFMOON FURNITURE 10.13-14 *2日間のみ参加
- 2019.09.23 Monday
- 21:24
- information
9月22日(日)工房OPEN致します
HALF MOON FURNITURE WORKSHOP
OPEN : 毎月第4日曜日 13:00〜17:00
今月も工房オープン致します。
小さなスペースですがオリジナル家具の展示をご覧いただけます。
家具のご相談や工房にご興味のある方は、お気軽にお立ち寄りください。
お待ちしております。
※一部の展示品を現品販売しております。
すべて一点ものになりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
- 2019.09.19 Thursday
- 01:45
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子供の椅子
以前、二人のお子さんたちのために椅子を製作してほしいとのご依頼をいただいた。
お子さんのための椅子とはいってもいわゆる子供椅子ではなく、half moonオリジナル01chair、しかも座面は本革張りでとのことだった。
そしてこの度、第三子のご誕生に合わせて新たに一脚、製作のご依頼をいただいた。
家具を選ぶ場合、子供が小さいうちはあまり高価なものは使わず、ある程度成長してから気に入ったものを探そうと考えるのが一般的だと思う。でも今回のお客様は全く違う考え方だった。もちろん、キズつけることもあるだろうし、汚すことだってあることは承知の上で、大人になっても使える椅子をプレゼントして子供のうちから使わせてあげたいとのことだった。素敵な考え方だと思った。
6年前に、ある作家さんの古い椅子を修理したことを印象深く覚えている。(作家の椅子1、作家の椅子2) それはその作家さんが小学生の頃にお父様から贈られて以来、50年もの間使い続けているものだった。その間、何度も新しいものに換えようとはしたものの、どうしても馴染まず、結局いまだにその子供用の椅子で文章を書いているとのことだった。50年の間に含んできた風景が、何にも変えられないその椅子の価値だと思う。そんな宝物を持っていることがうらやましいと思った。
これから年月をかけて作り上げていく物語の贈り物。それをどう展開させてゆくのか、どこかで終わらせるのかは本人次第だけれど、その物語をはじめてあげることは、親から子への素敵なプレゼントだと思う。
takashi
space design
HALFMOON FURNITUREでは「対話のあるものづくり」を大切にし
住宅や店舗など家具を中心とした空間全体の設計デザインも行っています。
それぞれのお客様が大切にすることを共有しながら
素材の質や空気感を表現する魅力ある空間作りを目指しています。
shop 01
BlueDOOR coffee たまプラーザ店
May 2019
協力会社:フィールドフォーム
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HALFMOON FURNITUREが自家焙煎珈琲店「Bluedoor coffee」の2号店の内装デザインと家具製作を担当。Bluedoor coffeeの店主の考えや美学を反映し、訪れた人に長く愛されるよう一つ一つの素材にこだわりシンプルに作り上げた空間。無垢材の吊り収納やカウンタースツール、節あり楢のカウンター天板、扉、照明台座、鞄掛けなど細かい部分まで素材やデザインを一つ一つ検討したお店。
blog: BlueDOOR coffee たまプラーザ店
8月25日(日)工房OPEN致します
HALF MOON FURNITURE WORKSHOP
OPEN : 毎月第4日曜日 13:00〜17:00
今月も工房オープン致します。
小さなスペースですがオリジナル家具の展示をご覧いただけます。
家具のご相談や工房にご興味のある方は、お気軽にお立ち寄りください。
お待ちしております。
※一部の展示品を現品販売しております。
すべて一点ものになりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
- 2019.08.21 Wednesday
- 00:57
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