オーディオラック、キャビネット

製作の記事を書かなければ書かなければと思いながらいつもなかなか書き出せない。
日々のことなのだから日記のように気軽に書けばとも思うけれど、なかなかそうもいかない。

特注家具の場合、お客様の思い入れが強い分、いざ書こうと思うとこちらも肩に力が入って手が止まる。そんな調子で一向に記事にならないまま時間だけが過ぎてしまう。

去年製作させていただいたオーディオラックとキャビネットもそんな家具の一つだ。
御夫婦でチェロを弾き、長年愛用されているオーディオ音楽を楽しみながら日々の暮らしを大切にされているそのお客様から最初にお電話でお問い合わせをいただいてから、実際に製作に入るまで何度打ち合わせを重ねただろう。
お問い合わせの内容は、愛用されているオーディオ機器のラックと、レコードを収納するためのキャビネットだった。デザインはいたってシンプルなもので、無垢材のものにこだわりたいとのことだった。こちらで作成したラフのプランをもとに、材料の選定、各収納スペースの細かな寸法、板厚を打ち合わせを重ねながら調整してゆく。さらにはお客様からのご提案で、お客様自ら用意されたオーディオ用のスパイクとスパイク受けで家具全体を支持し、振動の伝達を制御したいとのことだった。打ち合わせを重ねるたびに、お客様の音響に関する深い知識と探究心に好奇心をくすぐられていた。
製作が始まり、今回使うウォールナットの荒材を工房中に広げ、どの材料をどの部分に使おうかとあれこれ考えながら木取りしてゆく作業はとてもわくわくするものになった。同じ材料を使っても木取り次第で全く違う表情のものになってしまう。この家具をどのように使うのか、どこに置かれてどの部分が一番よく見えるのかなどイメージしながら木目の向き、どこで切るかを慎重に決めてゆく。
製作中も何度か御夫婦で工房に見に来てくれた。材料としての木から、家具が作られてゆく過程をとても楽しんでいただいている様子だった。
雑談の中でお客様がイタリアの工房で作ってもらったというチェロのお話から、さまざまな楽器製作者のこと、楽器用の木材のこと等々興味深いお話をたくさん聞かせていただき、こちらのほうが勉強させていただいていたような気がする。
オーディオラックとキャビネットが完成し、追加でご依頼いただいたチェロの弓立てを仕上げながら、この製作が終わればこれまで何度も来ていただいていたお客様も工房に来なくなるのかと、少し寂しくなるなと思う。
納品すると早速オーディオ機器をラックに収めてゆく。機材を収めるために作ったもの、やはり機材が入ってこそ生きるものだなと安心する。キャビネットも思った通りの雰囲気で佇んでいた。
一通りセットし終わると、ソファに座り、早速音楽を聴かせていただいた。正面左右には初めて見る平面バッフル型スピーカー。真空管アンプとの組み合わせで低音から高音、微細な音まではっきり再現されているのがよくわかる。特にレコードの音源は 柔らかく、深い響きで、いつまでも浸っていたいほど心地良い体験だった。
先日、久しぶりにお客様が工房に立ち寄ってくれた。オーディオラックの機材の下に銅板を敷いたとのことで写真を見せていただいた。お客様は、家具は納品された時が完成ではなく、そのときが始まりだという。僕もそう思う。
「これから10年かけて育てていきますよ。」
帰り際にとても嬉しい言葉をいただいた。
takashi

思い入れのあるもの。

「思い入れのあるもの。」

ふと、自分にとってはなんだろうと考えてみた。
最近、「思い入れものあるもの、大切なもの」を利用して家具にできないかという
お問い合わせやご注文をいただくことが続いた。家具のリメイク。
そこには、それぞれの思いや物語があるのだろうと思う。
新しく既製品を買うのではなく、思い入れもあるもので家具を新たにつくる。
想像すると感慨深いものがある。
このような仕事の依頼をいただけることは、わたしたち作り手にとって嬉しいことだ。
使われている方が「大切にしているもの」を形にするー新しく家具をつくることはまた別の
難しさはあるけれど、このような仕事も大切にしていきたいと思います。
kumiko

サイドボード

展示用家具として「サイドボード」を製作しました。

サイドボード

本体はウォールナットの無垢材にオイル仕上。引戸は「土+漆喰」を左官の技法をもちいて塗っています。
「沖縄の白土+中錆土」と漆喰を混ぜ合わせ、コテで平坦に仕上げています。
ウォールナットの家具

ウォールナット。土の白。
それぞれ自然のままの色のためか、全体として調和のとれたやわらかい雰囲気のサイドボードとなっています。古き良き日本文化「つちかべ」を家具の一部に取り入れることで、どこか和の雰囲気を感じていただければと思います。

和にも洋にも合う新作サイドボード。

工房に展示品がありますので、実物をご覧頂けます。
新作サイドボード
W1800xD400xH690 ¥285,000(税別)

kumiko

AVボード

AVボードのご注文を頂き、製作した。
お客様のお宅は暖炉のある重厚な作りで、リビングの大きな窓の外では芝生の庭を子供たちが走り回っていた。

何度か打ち合わせを重ね、収納する機器、配線経路等をお伺いして全てのものがきちんと収まるように設計する。

重厚なお宅の雰囲気に合わせて本体は全てナラ無垢材、扉はルーバーの引き戸、さらに中央にはセンタースピーカーを収納するとのことだったので、AVボードそのものにスピーカーネットを取り付け、家具の一部がスピーカーになっているようなデザインにした。

ナラ AVボード

ナラ AVボード

ナラ AVボード

納品して、お客様と一緒に機器を収納、配線してゆく。のんびり雑談しながらの作業がなんだか新鮮で楽しい。一時間ほどで無事全ての機器が収まった。家具は部屋の雰囲気にもしっくり馴染んでいて、あるべきところに来たのだと安心する。

takashi
 

本のための家

横浜青葉区の閑静な住宅街に夢のような建物が完成した。
住宅の庭に現れたその建物は、植本計画デザインの設計による「本のための家」だ。

本棚の家

この家の建設にあたって、約14mの壁面いっぱい、天井まで広がる全ての本棚の製作をご依頼頂いた。このお話をいただいたとき、製作した本棚が全て工房に入りきるだろうか、作ったはいいけれど工房から出せなかったりして、などと危惧しつつもわくわくした。
本棚には可動棚が入るのが一般的だ。しかし今回は、「入れる本は全て決まっているので棚板を動かすことはない。棚板は全て固定で良い。」とのことだった。
そうだよな、それでこそ特注だよなあなどと思いながら、本がびっしりと並ぶところを想像していると楽しくなった。僕が本を並べるわけではないのだけれど。。
工房は14m分の本棚で埋め尽くされながらも全て無事完成し、搬入、取付も順調に進んだ。前後二層のスライド本棚の動きも問題ない。
本棚
本棚
本棚
それにしても、なんて贅沢な空間だろう。家の中の一部屋を書庫にすることとも全然違う、自分専用の書斎を持つこととも違う、開放的に区切られることで生まれた「夢の空間」。
ここに流れる豊かな日常の時間を想うとわくわくする。
takashi

屋外用ローテーブル

納品翌日、お客様から電話が入った。

何か問題があったかな、と少しドキドキしながら出てみると、
「あのテーブル、二階の窓から見てもとってもいい感じよ!」
そのことを伝えるためにわざわざ電話をくれたのだった。なんと温かい心づかいだろう。
テラスで過ごす時間のお供にと、ご注文頂いた屋外用ローテーブル。ステンレスのフレームにタイル張りの天板という木を全く使わないデザインで、僕たちにとっても初めての試みとなった。

屋外用ローテーブル
屋外用ローテーブル

先日、テラスでのバーベキューにご招待いただいたとき、ご家族やご友人たちとともに炭火で焼いた贅沢な食材を楽しみ、心地よい午後の時間を満喫しながら、大勢の人たちの中でビールのグラスなど乗せたローテーブルの姿を見てなんともうれしい気持ちになった。
屋外用ローテーブル
takashi

家具修理

家具修理のご依頼を時々いただく。思い入れのあるものを古くなっても修理して、さらに長く使っていくということはとても豊かなことだと思う。

そして、そのような方が確実に増えてきていると感じている。修理のご依頼、ご相談を頂くたびにぼくはとてもうれしい気持ちになる。
以前、長く使われているダイニングチェアの接合部のガタツキを修理し、さらに古い塗装を一度剥がして、木の風合いを活かしたオイル仕上げに変えて欲しいとのご依頼を頂いた。
椅子修理
ゆるくなった接合部を一度全て分解して古い接着剤を取り除き、接合の堅さを調整してパーツごとに組み立て直す。
椅子修理
椅子修理
椅子修理
古い塗装を剥がして、オイルで仕上げるととても柔らかく、温かい風合いになった。長く使われたものには新しいものには持ち得ない雰囲気がある。
先日、やはり古くなって接合部にガタツキが出てしまったダイニングテーブルの脚とイギリス製のネストテーブルの修理させていただいた。
家具修理
家具修理
今回も一度接合部を全て分解、調整し、組み直してゆく。
家具修理
ksグ修理
家具修理
家具修理
家具修理
家具修理
最後に剥がれかけていた塗装を補修して完成した。
見知らぬ土地で見知らぬ職人さんが作った家具が様々な物語を経て僕たちの工房にやってきて、またお客様の元に戻ってゆく。なんとわくわくする仕事だろう。
昨日、また一脚の古い椅子が僕の工房に運び込まれて来た。見たところ重症だ。お客様にとって思い入れのあるとても大切な椅子だと言う。なんとか綺麗に直して戻してあげたい。
takashi

マンション作り付け家具

 東京都江戸川区の新築マンションにAVボードと壁面作り付け家具を納めさせていただいた。

AVボード ウォールナット

AVボード ウォールナット

AVボード ウォールナット

AVボード ウォールナット

大きな窓のあるリビングにW2300のウォールナット材のAVボード。その向かい、巾4mの壁面いっぱいに作りつけたデスク、飾り棚には合計10灯のダウンライトと4口のコンセントを取り付けた。デスクの正面にはコルクボード、飾り棚の間の壁はタイル貼りとお客様のこだわりの詰まった家具に仕上がった。

壁面家具

壁面家具

壁面家具

壁面家具

家具の取付け作業が終わったとき、奥様に呼ばれ洗面所に行ってみると、そこには以前ご購入頂いたウォールナット材のスツールが置かれていた。とても小さな家具だけれど、家族の一員のように受け入れていただき、生活の場に馴染んでいる姿を見ると安心し、とても嬉しくなる。

ウォールナット スツール

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屋外用ローテーブル製作

先日、屋外用ローテーブルのご注文をいただいているご夫婦が「流しそうめん用の竹材を買ってきた帰り」とのことで工房にふらっと立ち寄ってくださった。

せっかく立ち寄って頂いたのに工房はここのところしばらく続いている忙しさで、展示スペースまでもが作業場と化していて、文字通り足の踏み場もないという状態。さらに屋外用ローテーブルはちょうど材料が揃い、これから製作に入るという段階で、まだお見せできるものもなく、少し立ち話をしただけになってしまったけれど、こうして気軽に工房に立ち寄っていただけることが本当にありがたく、とても嬉しいことだ。

先週から本格的にこの屋外用ローテーブルの製作に入り、だんだん形になってきた。脚はステンレス、天板はタイル貼りといううちでも珍しいデザインのもの。今まで何度もお会いし、いろいろなお話しをしてきたお客様からのご注文のものだけに、お宅のテラスによく合ういいテーブルになると確信している。

帰り際、工房の前の竹やぶに目をやった御夫婦は声を揃えて、

「竹や。。。」

わざわざ買ってこなくてもここにこんなにたくさんあったかと。そう、先にわかっていればここから切っていってもらえば良かったのだけれど。

これから気持ちの良い季節。テラスでこのローテーブルを囲んで流しそうめんやバーベキューを楽しむご家族の風景を想像してみる。最後まで丁寧に仕上げていこうと思う。

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ダイニングテーブル ”kurage"

建築家 宮原輝夫さんの設計した住宅に、宮原さんがデザインしたダイニングテーブルの
製作依頼をいただいた。当初、直線的な四角いテーブルと、曲線的なテーブルの2案のデザインがあり、シャープな四角いデザインのものになると思い、心の準備をしていた。
”どんでん返しで丸い方のテーブルに決まりました!”

気持ちを切り替え、決まった方のテーブルの図面とにらめっこ。
建築家やデザイナーさんからの仕事は普段自分たちが考えない発想のものが多く、
その製作方法を考えたり、想像しているものを実際に具体的な形にしていく過程が
難しくもあり楽しくもあります。
色々な道具を使い試しつつ、形を作っていく作業は、普段あまり使用しない道具も使い、悩みながらも楽しい作業となった。
脚の形状を目や手で確認しながら、何度も客観的に見てほぼ手加工で製作した。

先日、完成したテーブルを見に宮原さんとスタッフの谷口さんが工房まで来てくれた。

      
完成したダイニングテーブルを見て、
「イメージ通りです!」「かわいい☆」と、とても満足して頂きました。
このテーブルは「kurage」と命名されました。

ダイニングテーブル
                                                                                 photo:miyahara teruo 

建物を設計し、その空間の為にデザインされたダイニングテーブル「kurage」。
昨日、引き渡し目前の住宅に完成したテーブルを納品した。
その空間にとても馴染んでいる姿に生活の風景の一部が見えたような温かい気持ちになった。
宮原建築設計室:http://www.miyahara-arch.com/

kumiko

打ち合わせ

雪がまだ残る中、今日の午前中打ち合わせに行ってきました。
屋外用のソファを購入されて、それに合うテーブルを作って欲しいとのご希望で、
いくつかプランをもってご提案をさせて頂きに。
いつも通りの、明るい笑顔で奥様が迎えてくれ、紅茶とバームクーヘンをいただきながら、
まずは私たちの作っている小物について、少々談義。
毎日工房にこもってものを作っていると、視野が狭くなり客観的にものが見られなくなるときがあります。色々なものを見たり、経験されているかたの意見を伺うことで、新しいアイディアが生まれたり、
より洗練されたものにもなっていく。そして、そのやりとりが楽しいものです。
今年は家具以外にも力を入れていこう!HPももっと充実させよう!と、前向きな気分になりつつ
今日の本題へ。
プランを出すときは、5,6パターンかそれ以上考え、悩み、最後にこれだと思う1案をお見せすることが多いのですが、今回は全然違うパターンを3案。
屋外テーブル。この春には製作する予定です☆ 
素敵なテラスにHALFMOONの家具を置かせていただけることが、とっても嬉しく、楽しみです。
先週の午前中はAVボードの打ち合わせ。
AVボードは中に機器が入るので、コードの通し方、熱がこもらないようにと、機器との取り合いがあります。
ご主人と色々打ち合わせをしていくなかで、センタースピーカの入る部分に、家具に直接サランネットを張り込む仕様になりました。普通ならスピーカーを置き、そこがオープンになったりしますが、家具にサランネットを張り込むことで、AVボード自体が一つの機器になり、オーダーでしかできない仕様になっていきます。
お客様との打ち合わせは、使うこと、造ること、デザイン、バランスetc…
色々な角度から見て意見をだす場で、家具を製作していくうえで、とっても大切な時間です。
このAVボードもこの春に製作予定です。
この家具もきっとかっこよくなる、そう思っています。
 
kumiko
 

ベンチ納品 第二弾

茅ヶ崎、松尾建設青木社長宅に2台目のベンチの納品に行ってきた。

スチールベンチ

前回、ダイニングテーブルとベンチ1台を納品させていただいた時に、反対側もベンチにしよう
とのことでご注文いただいたもので、デザインは変えずにスチールの脚にナラ材の座板。
セットした時にテーブルが3枚のガラス戸の中央に来るように、今回のベンチは奥行を500に
広げて調整した。

ダイニングテーブル スチールベンチ

今日も青木さんと奥さんのかおりさんがいつも通りのリラックスした雰囲気で迎えてくれ、

納品したばかりのベンチでコーヒーをいただいていると、とてもあたたかい気持ちになった。
青木さんご夫婦は仕事中も家にいるときも全く雰囲気が変わらない。いつも気遣っていて、
誠実で、それでいて自然で、くだけていて。リラックスした中にも厳しさがある。
それが青木さんたちの人望につながっているんだろうと思う。

会うたびに前向きな気持ちになる。誠実に頑張ろう。

takashi