「光る泥だんご」




HALF MOON FURNTURE WORKSHOP (ハーフムーン ファニチャワークショップ) 横浜市青葉区寺家町にある注文家具工房です。小物や椅子、キャビネットなどご要望に応じて、一つ一つ丁寧に設計・製作しています。
「光る泥だんご」
工房周辺の水田の田植えもすっかり終わり、若い稲の鮮やかな緑が日に日に密度を増している。
Michel Camiloの”LUIZA”が終わったところで音楽を止めると、
「住宅とは何か?」
この展覧会が、来場者のひとりひとりにとって、小屋を通じて考える
kumiko
中村好文展「小屋においでよ!」(ギャラリー間/~6月22日 日曜月曜祝日休み)
是非、足を運んでみてください。おすすめです。
30年にも及ぶ物語に少しだけ参加させていただいて、この物語はまた続いてゆく。
わたしが土という素材にで出会ったのは、10年以上前になるだろうか。
お店の端(お手洗い)にでも・・・と言って渡したが、今は、彼の好きな音楽のジャケットと共に、
お店の大きなRCの壁面にでーん と飾ってもらっている。
「小さな額の中の磨き土壁」
日本の土壁。天然素材である「土」のもつ、やさしさ。
中でも光沢があり、水拭きもできる土壁として幻になりつつある「大津磨き壁」。
天然土と石灰をブレンドし、コテで磨き上げるその「伝統技法」を
現代のグラフィックアートに融合。
使用した材料は「兵庫県出石白土・沖縄県赤土・天然藍顔料と石灰」。
この小さな額の中に、古き良き時代の日本の文化をほんの少し織り込むことができたと
考えています。地球環境が変化し始め、温暖化が進む今、この先ペンギンたちが
生きることができなくならないよう、製作を通してできる小さなこと、
大切にしてきたいと思います。
kumiko
偶然か必然か、人生の岐路に立ったとき、次の決断を後押ししてくれるような
大切な出会いに恵まれることがある。
青木社長との出会いは僕にとって、そういった出会いの一つだったと思う。
僕が2年間の海外生活を終えて帰国し、この国で生活していくことに興味を
失いかけていたときのことだった。
真夏の明るい光に包まれた茅ヶ崎、雄三通り。陽気な雰囲気の通りを南に向かって歩く。
海の気配が濃くなってきたあたりに松尾建設はショールームを構えている。
Tシャツにビーチサンダル姿の青木さんのフランクで明るい口調に、初めて会ったにもかかわらず、
僕はすっかりリラックスしていた。
今までやってきた家具作りのこと、数ヶ月前までいたフィジーでの暮らしのこと、
これからのことなど話して過ごす。
そのときすでに僕はその人柄に惹かれていたと思う。こんなに懐の深い人に
今まで会ったことがあっただろうか。
青木さんの人柄のせいか、松尾建設のスタッフはいつも生き生きと仕事をしているように見える。
陽気な現場監督さんたち。ひときわのほほんとした雰囲気の鈴木さん。
そのとぼけた存在感にはいつもあたたかい気持ちにさせられる。
「ここの家具作ってよ」
と、青木さんが言う。ちょうど松尾建設のショールームを改装する予定だという。
それに合わせて家具も作ろうかという話だった。
そうは言っても、初めて会ったばかり。僕が作ったものだって、数枚の写真を見てもらっただけ。
それ以外に見せられるものもまだない、駆け出しの身。
もちろん、本当に作らせてもらえるとは思っていなかった。青木さんの軽い感じの発言が、
実は全然軽くないのだということに、そのときはまだ気付いていなかった。
それから約2ヵ月後、青木さんからショールーム改装にともなう家具の製作依頼をいただいた。
受付カウンター、キャビネット、打ち合わせテーブル天板2枚。
まさか、こんなに大きな話になるとは。
これがhalf moon furniture workshopを本格的に始動させるきっかけとなった。
今回の設計は、建築士の細谷さん。もらった図面をもとに、細谷さんが大切にする部分と、
製作サイドから材料の性質や、家具としての機能を考慮した収まりや構造を検討し、
すり合わせ、細部のデザインを詰めていく。
松尾建設の明るい雰囲気を重視して、全ての家具をタモ無垢材で製作することになった。
長さ約3mの荒木の材が20枚近く工房に届き、製作が始まった。材料を工房中に並べてながめ、
どれをどこに使おうか、よりわけながら木取っていく。木屑にまみれ、それぞれの材を
寸法に削りながら、わくわくした気持ちになる。
打ち合わせテーブルの天板にカンナをかけながら、このテーブルにどっかり腰を下ろして
いつもの人懐っこい笑顔でスタッフと談笑する青木さんの姿を思い浮かべ、
キャビネットの引き戸を作りながら、暇そうな鈴木さんが意味もなく引き戸をからから、
開け閉めして遊んでいる様子を想像しては、一人笑みをこぼしながらの作業となった。
約一ヶ月の製作期間を経て、全ての家具の製作が終了した。
数日前に改装工事が終わったばかりのショールームに家具を設置していく。以前からの
オープンで明るい雰囲気は残しつつ、茅ヶ崎の地にふさわしい、より洗練された
新しいショールームに僕たちの作った家具がしっくりと馴染んでいる姿を見て安心する。
w2000の受付カウンター。前面ルーバー部は、細谷さんの今回一番のこだわり。
日が暮れてきた頃、どこからともなく現れた鈴木さんが、ゆっくりとした足取りで
キャビネットの方に近付いてゆき、引き戸をからから、からから、
動かしては笑みを浮かべていた。
takashi
作り手と対話ができるオープンな場であり、いろいろなことがここから生み出せる
WORKSHOPになることを目指して。。。
ガサガサ、ザザザザ、ガサ、ガサ
向かいの竹やぶから、たびたび聞こえてくる妙な音。
動物でも来ているのだろうか。
そっと外をのぞいてみる。
隣の精密金属加工屋さんの小沢さんだった。
それにしても、棒を持ったおじさんが真面目な顔をして
薮の中を行ったり来たり、ガサガサ、ガサガサ。
妙な光景だ。
何してるんだろう。大切なものでも落としたのだろうか。
間の抜けた挨拶みたいに。
「いや。これじゃ大きくなり過ぎちゃってて、堅くて食べられんよ。。。」
一日作業場にこもりっぱなしで、一度も外に出てこなかった。
毎日毎日、一日に二度も三度も、やぶの番人みたいに
目を光らせていた小沢さんが目を離したのは、たった一日だった。
見ることはなくなった。
うれしくなる。
タケノコに、ではない。