
あの人に会わなければ僕はたぶん一生イエティの存在には気が付かなかったと思う。
あの人にとっては、何年か前に偶然入ったネパールのカフェで働いているイエティに会ったのが最初らしい。その時は、あまりの嬉しさにイエティが着ていたカフェのスタッフTシャツを買って、イエティと一緒に記念写真を撮ったのだそうだ。
僕は今までどこかのお店のスタッフTシャツを買ったことは一度もないし、買いたいと思ったこともない。普段誰かと記念写真を撮ることもまずない。
でも、外国でふらっと入ったカフェでイエティが働いていたら、やっぱり僕も同じことをするような気がする。
この前、あの人がイエティを作ってくれた。それを見ていてはっとした。何もネパールのカフェまで行かなくても、実はイエティはいつもすぐ近くにいるのかもしれない。そういえば時々腰のあたりに大きな手の温かい感触を感じることがある。近すぎて今まで気が付かなかったけれど、本当に大切なものはすぐ隣にあるのかもしれない。たぶんあの人にはそれがはっきりと見えるているんだと思う。
takashi