僕の工房にはよく蜂が来る。
よくというのは毎日、しかも何度も何度も。来るというより、いつもいると
言えるかもしれない。
とはいっても、お互いそれぞれのことに忙しく、特に干渉し合うこともない。

一度、長い材料を振り回しながら木取りをしているときに、天井近くにいた蜂に気付かず、
材料を当ててしまいそうになり、怒らせたことがある。突然僕の近くまで降りてきて、
ぶんぶん、ぶんぶん。
「ちょっと待ってくれよ。そんなつもりじゃなかったんだから。」
言ってみてもわかってもらえず、落ち着くまでしばらく作業を中断して待つよりほかなかった。
時にはそんなこともあるけれど、基本的にはまあ、お互いうまくやっている。
先日、隣の小沢さんが蜂の巣をくれた。小沢さんの作業場の入り口に作られていたものらしい。
なんてきれいに作るんだろう。しばらく2人で見とれていた。
それにしても不思議だ。みんながそれぞれ何をどう作るのかわかっているのだろうか。
それとも監督みたいな蜂がいて、指揮しているのだろうか。
日本中、世界中どこに行っても、いつの時代にも同じ構造、同じ形のものを作っているなんて
とても神秘的なことに思える。

その巣は工房の窓際の棚の上に置いておくことにした。
takashi