季節の移り変わり             

ガサガサ、ザザザザ、ガサ、ガサ

         
ここのところ、工房で仕事をしていると

向かいの竹やぶから、たびたび聞こえてくる妙な音。

動物でも来ているのだろうか。

そっと外をのぞいてみる。

 


なんだ。

隣の精密金属加工屋さんの小沢さんだった。

それにしても、棒を持ったおじさんが真面目な顔をして

薮の中を行ったり来たり、ガサガサ、ガサガサ。

妙な光景だ。

何してるんだろう。大切なものでも落としたのだろうか。


ああ、そうか。

 


「タケノコ、ですか?」

 


「うん、、、」

 


「どう?」

 


「ないね。。。」

 


それから毎日、この繰り返し。

間の抜けた挨拶みたいに。

 


10日もたったある日、大きなタケノコを三本も手にした、小沢さんを見つけた。


「とうとう、採れましたね。」


 

「いや。これじゃ大きくなり過ぎちゃってて、堅くて食べられんよ。。。」

 


「じゃあ、どうして抜いたの?」

 


「ん。」

 


そういえば、小沢さん、昨日は仕事が立て込んでいたらしく、

一日作業場にこもりっぱなしで、一度も外に出てこなかった。

毎日毎日、一日に二度も三度も、やぶの番人みたいに

目を光らせていた小沢さんが目を離したのは、たった一日だった。

 


その日を最後に、棒を持った小沢さんを竹やぶの中に

見ることはなくなった。

 


これから毎年、こんなところに季節の移り変わりを見るのかと思うと

うれしくなる。

 

タケノコに、ではない。

 


小沢さんに、だ。                  


takashi